こんな僕でも・・・が欲しい！

ポロリと ページ16

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「そこまでの事はしなくても」
「助けてくれて、食事までいただいたお礼です。気にしないでください！」

　食事のお礼に食器洗いを買って出た僕。

　お腹が満たされたわけじゃないけど、あの美味しそうな匂いをおかずに雑炊が食べられた(変態じゃないよ？！)だけいいと思おうと気持ちを切り替え、食器を洗ってるところ。

　できれば貴女の血をちょこっとだけでもいただければベスト・オブ・ミーなんですが。
この香りだけで我慢します。我慢できますとも！

「でも、まだ顔色が優れないみたいですけど、大丈夫なんですか？」
「え、そ、そうですか？」

　Aさんの指摘されて、改めて自分の体の危機に気づかされた。

　顔色に出る程非常事態なのか。困ったな。
かと言ってこれ以上はAさんに迷惑はかけられないし。

「大丈夫ですよ。ご飯いただいたんで、時期に良くなると思います」

　僕は心配をかけまいと笑って誤魔化した。

「それならいいんですけど……あまり無理をなさらないほうが、」

　Aさんはそれでも僕を気遣う言葉をかけてくれた。


　ま、血が足りてないから仕方ないか……。

　コップを洗う手を動かしながらAさんに言えない本音を思う。

「え？！大丈夫なんですか？それっ！」
「へ？」

　しまった！思ったつもりの心の声がばっちり口に出てた！

「あ、えっと……。気にしないでください！独り言ですからっ！」

　そう言ってももう取り返しがつかないみたいで、

「貧血とかなら起きてたら辛いはずです！ソファで休んでてください！」

と、Aさんに洗っている最中のコップを取り上げられた。

「あ、ダメ、まだ濡れて……」

　Aさんが濡れたコップを手に取った瞬間、つるっと僕らの手から滑り落ち、床に叩きつけられ割れてしまった。
　胸に刺さるような不快な音に僕の身体がビクッと震えた。

「ああっ！ごめんなさいっ！僕がちゃんと握っていなかったから」
「いえ、私こそ無理矢理に取りあげちゃって……痛っ！」


　散らばる破片を集めていたAさんの手が止まった。

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