53 ページ3
朝ご飯を終え、私は出勤の支度をしながら、
A「主任…スーツ、昨日と一緒のまま…。」
昨夜、ハンガーに掛けておいたスーツに袖を通す主任についそんな事を言ってしまった。
SJ「ん？ああ、大丈夫。これからいったん家に戻って身支度して、ついでに外回りしてくるから。出勤は遅らせる！」
にっこり笑った主任の目はまだ少し腫れていた。
＿＿＿＿＿ ＿＿ ＿
A「…気を付けて帰ってくださいね。」
SJ「うん、ありがとう！」
靴を履き、私の方に向き直りニコッと笑った主任。
でも、どこかぎこちない。
SJ「あ、ここまででいいよ。」
A「はい・・・。」
SJ「・・・・。」
A「・・・。」
狭い玄関で向かい合ったまま、何故か二人そろって黙り込む。
SJ「はは…女性の部屋に泊まるなんて…初めてで。実はすごく緊張してた。」
A「私も…男の人泊めたのは…初めてです。」
SJ「はは・・・そっか。」
A「・・・。」
SJ「もう・・・行くね？」
A「・・・はい・・・気を付けて。」
それでもなかなか動けない私たち。
私は意味不明な緊張感から、何となく下を向いてしまった。
SJ「Aちゃん、ごめんっ･･･」
突然腕を引かれた。
A「え・・・」
主任の胸に抱き留められ、同時に目の前が主任の顔でいっぱいになった。
私の顎に指を掛けた主任。
思わず目を瞑ってしまった。
柔らかいものが唇に押し付けられた。
A「んんっ」
・・・口の中に温かいものが入りこんできた。
目を閉じたせいで感覚が鋭くなっていく。
ぎゅっと抱きしめられ、私の後頭部には手が添えられている。
角度を変え絡めとられ、吸われ、口内を舐めるように動く。
ようやく私は主任にキスをされていることに気付いた。
気付いたとたん、胸がうるさく高鳴る。
恥ずかしさと一緒に芽生えた体の奥の不思議な感覚…。
長いような、一瞬だったような。
唇が離れる瞬間、互いの薄く漏れた吐息とちゅっ…と小さな音が聞こえた。
A「…は、っ…」
SJ「・・・っ、ごめん・・・我慢してたんだけど・・・ダメだった。
会社・・・気を付けて行っておいで。」
目を開けたところにいた主任は、揺れる瞳で私を見つめ、私の唇を親指でひと撫ですると、ゆっくり体を離し玄関を後にした。
されるがままだった私は、そのままそこに立ち尽くしていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 393人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あがしおん
| 作成日時：2018年5月12日 12時
