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SJ side


僕がかつて口にした言葉が、Aちゃんの口から出てくるなんて思いもしなかった。


あの人に言った僕の下心を含んだ歪んだ言葉も、純粋なAちゃんが紡ぎ出せばとても綺麗で真っ直ぐな言葉に聞こえてくる。



でも、今の醜い僕はその言葉を自分の都合よく解釈してしまう。



ダメだ……ダメだ!




SJ「……そんな言葉、軽々しく言っちゃダメ……。」

そう、僕の様になって欲しくない。

Aちゃんは綺麗な心のままでいて欲しい…。


SJ「勘違いするから…弱ってる人にその言葉は・・・特に好きな人に言われたら…」


そう言いつつも、この場を立ち去れない僕は卑怯者だと思う。

期待してしまう。次の言葉を。


せめて、僕を貶して追い出す言葉が欲しいな。そうしないと、僕が僕を抑えられない。


なのにAちゃんは


「主任の辛そうな顔、見てられません。」


そう言って優しく抱きしめるんだ。


あの人も……そうだったのかな……こんな気持ちだったのかな……。
本当は……突き放して欲しかったのかな……。

SJ「……うぅ……うううああああっ」

どうして今、僕は泣いてるんだろう。


何が悲しい?
何が悔しい?
何が辛い?
何が苦しい?
何が欲しい?


当の昔に封じ込めた叶わぬ想い。

僕にとってAちゃんはあの人の代わりだった?
あの時の想いをAちゃんに向けただけ?




……違う。




Aちゃんとあの人は違うんだ。


優しさも、笑顔も、手のぬくもりも…似ているけど、違う。

僕が奪ったあの人とは違う。



僕は純粋にAちゃんが好きだ。



SJ「僕は……まだ……壊していない?」
A「何をですか?」
SJ「Aちゃんを……」
A「……壊れたのは、上司として見ていた私の気持ちだけです。」
SJ「Aちゃん……」
A「私自身は何も壊れてません。話すのが辛いなら、無理に聞きません。

私に話し辛かったら、課長やユンギさんに話してみたらどうですか?」

SJ「うん……。そうだね。いつかは……話してみようかな……。」

Aちゃんは僕を抱きしめ、子供をあやす様に優しく頭を撫でている。




……落ち着く。安らぐ。和む。癒される。




頭を撫でられるたび、ぐちゃぐちゃに小さくなった僕の心が、少しずつ綺麗に広げられていくようだ。





撫でられる心地よさに身を委ねていると、いつの間にか僕は深い眠りに落ちていた。

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作者名:あがしおん | 作成日時:2018年5月6日 22時

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