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A「主任?目が覚めましたか?」
私に完全に身を委ねている状態だから、顔を見ることができない。
主任はしばらく黙っていたけど、
SJ「ごめんね……好きで、ごめんなさい。
僕のせいで壊してしまって、ごめんなさい。」
その後も壊れたおもちゃの様に、何度も謝りながら好きと言い続けていた。
どうして主任は謝るんだろう。
何も悪い事はしていないのに。
……壊したって何を?
ふと、昼間の課長の話を思い出した。
『好き過ぎて好きな人に近づけないんだ。昔からね。』
私に何か遠慮してるのかな?
でも、遠慮するなら告白なんて……。
A「……好きだからこそ、近づいて行かなきゃいけなんじゃ…。」
独り言のように言った言葉に
SJ「近づいたら壊しちゃうんだ……」
そう返した主任。
もうはっきりとした口調に戻っているから、きっと酔いは醒めているはず。
A「……酔いは覚めましたか?」
SJ「うん……僕はどうしてここにいるの?」
抱きしめていた手を緩めて主任の顔を見ると、困ったような、泣き出しそうな、そんな顔。
A「マンションの前で座り込んでいるところを拾ってきました。」
SJ「えっ?嘘……。」
驚いたってことは、無意識にここにたどり着いたんだ。
A「ホントです。覚えてないんですか?主任?」
SJ「うん……ごめん。」
A「ふふ…もう、さっきから……主任、謝ってばかりですよ?」
SJ「謝ってばっかりなの?」
A「はい、私に向かってずっと、好きでごめんって……。」
SJ「え!なにそれ!僕って恥ずかしい奴…。」
真っ赤な顔になるとくるりと背を向けた。
A「それと、『壊してしまってごめんなさい』って。」
SJ「……。」
A「何を壊したんですか?課長でもないのに…。」
……冗談のつもりだった。
主任が黙りこくったまま、無視を決め込んだと思ってた。
SJ「……っ」
え?泣いてる?
A「主任?どうして……」
SJ「僕が壊したんだ……僕のせいなんだ……。」
そこにいたのは、いつも明るくてオヤジギャグを飛ばしている元気な主任じゃなかった。
まるで何かに怯え続ける少年のようだった。
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作者名:あがしおん | 作成日時:2018年5月6日 22時