好きな人は遠きにありて愛でるもの (ページ38)

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SJ side

SJ「……モノって……Aちゃんは物じゃないんだから……。」

ユンギに忠告され、ずっとイライラしていた。

わかってる……わかってるんだ、ユンギ。

今の僕は中途半端。

ジョングクみたいに攻められないくせに気持ちを伝えてしまった。

酒の力を借りないと抱きしめる勇気もなかった。

何より僕の身勝手がAちゃんを苦しめている気がして仕方ないんだ。

ジョングクはAちゃんに今まで以上に積極的になった。

いや、隠していた気持ちを伝えることが出来て、スッキリしているだけなのかもしれない。

僕はどうなんだろう。

今朝ジョングクに言い寄られて困ってそうにしてたところを助けたっきり、声も掛けられていない。
……避けられているようで怖い。

いや、僕が避けてしまっているのか……。

SJ「やっぱり遠くでAちゃんの笑顔を見ているだけで良かったのかな…。」

アルパカのぬいぐるみを抱いたまま、意味もなくキーボードをカタカタしていると、ナムジュンと一緒に帰ってきたAちゃんを見つけた。

さっきナムジュナがAちゃんを助けたんだっけ……。さすがは課長。

Aちゃんの表情がさっきより緩んでいる。

よかった……少しは元気になったんだ。さすがはジュナ。

SJ「はは……僕は……役立たずだな。」

好きなのに近づけない。好きだから近づき難い。僕じゃ壊してしまいそうで。
悲しくて、情けなくて、ぬいぐるみが潰れるほど顔を押し付けた。

誰かが僕の肩を叩いた。

ゆっくり顔を上げた。

NJ「今日、飲み行きません？……３人で。」

SJ「――ナムジュナ。」

いつもの3人で…か。

SJ「うん、そうだね。行こうか。」

結局、今日１日、僕はAちゃんと言葉を交わすことはなかった。