〜天真〜 3 ページ20
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「美味しい!……んん!これ、好きぃー」
「おー。良かった良かった。これも食うか?」
「うん!……わぁ!ヤンコチも美味しーい!」
あまり屋台には出向いたことがなかったAが、目の前の料理に目を輝かせて大喜びで頬張っている。
「そんなにたくさん食べて、腹は大丈夫なのか?」
「んー?大丈夫!今のうちにご馳走は貯めておくの」
「おいおい、食い溜めかよ……」
食い溜めとか、女がすることじゃない気もするけど……。
Aはお構いなしに、ニコニコしながら目の前の料理を平らげていく。
それだけ食べれば当然……。
「う、苦しい……」
「だろうな」
肉ばかり軽く4人前を食べ、更にスープやら飯やら欲張って腹に詰め込み、悶え苦しんでいた。
「吐くか?」
「ダメ……勿体ない」
「……ったく」
Aの家まで抱えて帰り、寝室まで運んでやると、ベッドに凭れて苦しそうにうつ伏せたままピクリともしなくなった。
……かと思えば。
「そう、だ……あれ飲んどこ……」
独り言を呟きキッチンの戸棚を漁り始めた。
何を始めるのか黙って見守っていたが、
「なんか手伝おうか?」
声をかけるが、青い顔して大丈夫、と弱々しく断られた。
薬でも飲むのかと思ったら、取り出したのは乾燥させたハーブの瓶。
蓋を開けた瞬間、メントールの香りが鼻にツンと刺さる。
ああ、なるほど。
ポットを火にかけ、乾燥した葉をティーストレーナーに入れて、カップにセットした。
ポットから湯気が噴き出し、慌てて火を止めたA。
ティーカップにお湯を注ぐと立ち上るペパーミントの香り。
「それ何?」
「健胃効果のあるお茶」
煮出したペパーミントティーをゆっくり口に運んでいた。
「そんなもん飲むくらいなら、欲張って食わなきゃいいのによ?」
「いいの!それもいい思い出よ」
「何が思い出だよ。外食なら俺がまた連れて行ってやるのに」
食べ過ぎで多少顔色が悪かったAがニコニコと微笑み、
「ホント?!また連れて行ってくれるの?!」
「あぁ、毎日でも連れて行ってやるよ」
「えへへっ!ありがとう、ユンギ!」
甘い香りがまた華やいだ。
〜天真〜
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あがしおん(プロフ) - かなこさん» コメントありがとうございます!ドキドキ&しっとりとした雰囲気を暫しお楽しみください♪ (2019年7月3日 7時) (レス) id: 97c4c54377 (このIDを非表示/違反報告)
かなこ(プロフ) - こんな僕でも…を読み返そうかなと思っていたらまさかのユンギ verの連載が始まっててすぐ読みました(*^^*)こっちのお話もドキドキさせてもらってます(〃ω〃) (2019年7月2日 23時) (レス) id: 9abaeb2ac4 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - miyaさん» コメントありがとうです!あぁっ!心臓大丈夫ですかっ?!男前ユンギさんが描けてるなら、もう作者いうことないです! (2019年6月25日 22時) (レス) id: 00967bc65a (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - たきゆさん» コメントありがとうございます! ええ、切ねぇです。正直切ねぇです。切ねぇですが!ボチボチゆるっと更新をお待ちいただけたらなぁ、と! (2019年6月25日 22時) (レス) id: 00967bc65a (このIDを非表示/違反報告)
miya(プロフ) - ユンギがぁ〜男前過ぎて、心臓が痛いです!! (2019年6月25日 21時) (レス) id: 3d660c888b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あがしおん | 作成日時:2019年6月5日 21時