〜運命〜 3 ページ13
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「……くくっ!何だよお前、ヴァンパイアになりてぇのかよ?」
「はい、そしてコウモリになって空を飛んでみたいんです!」
ぱっと香りが華やいだ。
こいつ、本気で空を飛びたいのか。
「ふはははっ!っははははは!!そりゃ残念!俺が噛みついたところでヴァンパイアにはなれねぇよ」
「え?!嘘……噛まれたら吸血鬼になるんじゃないんだ……」
彼女の表情が落胆でみるみる暗然する。
「ぶっ!!」
今だかつて、こんなに俺を笑わせた女がいたかって思うほどに盛大に笑った。
Aは俺に思いっきり笑い者にされ、顔を真っ赤に紅潮させ不機嫌になった。
「はぁー!面白れぇ!
あのな、ヴァンパイアになるのは、吸血鬼の正当な血統の男だけなんだよ」
「そう、なんですか」
「それにな?俺らが蝙蝠に化けて空を飛ぶなんて、あれ、迷信だからな?」
「……え、そうだったんだ……!」
「今時そんな迷信信じてるヤツが居たとはな!」
「……悪かったですね!馬鹿で」
「馬鹿とは言ってねーだろ?でもごめん……、ぷっ!くくくっ……!あーあ!苦し!」
「そんなに笑わなくても……」
もう一度謝ったが、遂には横を向いて子供のようにむくれてしまった。
その白い首筋が俺を誘う。
トクリと胸が鳴る。
本来の目的、ちょっと忘れそうになってた。
笑いがようやく治まったところで、テーブルに肘を突き、Aのふくれっ面の横顔を見つめた。
「──なぁ、A、」
「きゅ、急に馴れ馴れしいです、呼び捨てなんて」
「なら、俺の事も呼び捨てで構わねぇよ」
「分かりました!今から貴方はただのユンギです!貴方みたいな意地悪な人、もう恩人だなんて思いませんから!」
「おー、いいねぇ。潔くて好きだな」
「そ、そりゃどうも!」
「潔いついでにさ、ひとくち貰えね?」
ずっとそっぽを向いていたAの顔が、ブンと音が聞こえそうなほどに俺の方に向き直った。
その目は驚きで大きく見開かれている。
「ひ、ひとくち?何、を?」
「お前の血」
「な、何故でしょう?」
「腹減ったから」
頬を真っ赤に染めて、ガタンと豪快に椅子から立ち上がったAが数歩後退る。
初めて俺に対して少しの恐怖を示した。
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あがしおん(プロフ) - かなこさん» コメントありがとうございます!ドキドキ&しっとりとした雰囲気を暫しお楽しみください♪ (2019年7月3日 7時) (レス) id: 97c4c54377 (このIDを非表示/違反報告)
かなこ(プロフ) - こんな僕でも…を読み返そうかなと思っていたらまさかのユンギ verの連載が始まっててすぐ読みました(*^^*)こっちのお話もドキドキさせてもらってます(〃ω〃) (2019年7月2日 23時) (レス) id: 9abaeb2ac4 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - miyaさん» コメントありがとうです!あぁっ!心臓大丈夫ですかっ?!男前ユンギさんが描けてるなら、もう作者いうことないです! (2019年6月25日 22時) (レス) id: 00967bc65a (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - たきゆさん» コメントありがとうございます! ええ、切ねぇです。正直切ねぇです。切ねぇですが!ボチボチゆるっと更新をお待ちいただけたらなぁ、と! (2019年6月25日 22時) (レス) id: 00967bc65a (このIDを非表示/違反報告)
miya(プロフ) - ユンギがぁ〜男前過ぎて、心臓が痛いです!! (2019年6月25日 21時) (レス) id: 3d660c888b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あがしおん | 作成日時:2019年6月5日 21時