〜遭逢〜 7 ページ8
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ところがあまり我慢強くない俺は、そんな熟考を早くも放棄し、香りに誘われるがままに手の甲に口付けを落とし、軽く牙を立てていた。
柔らかな肌に俺の牙が掠り、血が滲み出す。
滲む血と共に溢れ出す甘く濃い血の香りに、思考することすら忘れそうになる。
手の甲に舌を這わせ、その甘い蜜をひと舐め。
「ふ、なかなかだな」
香りはあれほど濃厚なのにさっぱりした甘味。フルーツワインのような軽やかさ。さらりとした舌触りと後に残る甘い花のような香り。
でもやっぱり何か……気になるこの感じは……。
するっと何度か血を舐めとり、傷を消す。
俺達の唾液には傷を瞬時に治癒させる力がある。
まあ、噛みついて血を頂くわけだから、後始末ができないと素晴らしくグロテスクな惨状になってしまうからな。
味見程度でも血を口にできたことで、さっきのごろつきを吹っ飛ばした疲れが僅かばかり解消された。
やっぱせっかくだから、このまま噛みつかせてもらいてぇなぁ……。
そんなことを考えながら、女の隣に寝転んで目を覚ますのを待った。
なかなか目覚めない、行きずりの女と過ごすこと小一時間──。
「……ん、」
漸く眠り姫が目を覚ました。
……らしい。
「ひゃあああん!」
「…………んあ?……っせーな……」
俺は待ちくたびれて、その女の横ですっかり熟睡してしまっていた。
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あがしおん(プロフ) - かなこさん» コメントありがとうございます!ドキドキ&しっとりとした雰囲気を暫しお楽しみください♪ (2019年7月3日 7時) (レス) id: 97c4c54377 (このIDを非表示/違反報告)
かなこ(プロフ) - こんな僕でも…を読み返そうかなと思っていたらまさかのユンギ verの連載が始まっててすぐ読みました(*^^*)こっちのお話もドキドキさせてもらってます(〃ω〃) (2019年7月2日 23時) (レス) id: 9abaeb2ac4 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - miyaさん» コメントありがとうです!あぁっ!心臓大丈夫ですかっ?!男前ユンギさんが描けてるなら、もう作者いうことないです! (2019年6月25日 22時) (レス) id: 00967bc65a (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - たきゆさん» コメントありがとうございます! ええ、切ねぇです。正直切ねぇです。切ねぇですが!ボチボチゆるっと更新をお待ちいただけたらなぁ、と! (2019年6月25日 22時) (レス) id: 00967bc65a (このIDを非表示/違反報告)
miya(プロフ) - ユンギがぁ〜男前過ぎて、心臓が痛いです!! (2019年6月25日 21時) (レス) id: 3d660c888b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あがしおん | 作成日時:2019年6月5日 21時