愛しのJasmine

〜利器〜　１ ページ44

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最初の何年かは本当に衝突ばかりだった。


一人で全てを行ってきたAと全てが人任せな俺とでは、そもそもの生活観が違った。

俺にとってAはメイドの仕事を奪っては困らせる、頑固な我が儘娘に見えた。
Aにとって俺は横暴で、非常識な金持ちのボンボンに映っただろう。

結婚してしばらくのAの口癖は

「それくらい、自分でやんなさい！」

だったな。

その度に、メイド達からやんわり窘められ、それでも納得いかず憤っていた事も多かったように思う。



それでもこんな俺を変える出来事があった。


いつもの如く、風呂にメイドを呼びつけて湯浴みしている時の事だった。
何か俺に用があったらしいAが、風呂場に居る俺とメイドの姿を見て怒りに震えていた。

「自分の身体洗うのに、何で忙しいメイドさん呼びつけるの？！」
「……いや、いつもの事だし」
「だからって！うら若き女性に、自分の裸見せて何が楽しいのよ？！変態っ！」
「なら、お前が洗ってくれよ」
「はあ？何で私が！」
「俺の奥さんだから。見られても平気だし」
「んぐ……」
「何なら触っても──」
「もう！ユンギのバカっ！」

Aはプンプンと頭から湯気を上げて自分の部屋に帰っていった。


「また怒らせちまったか」
「……だから申し上げましたのに。湯浴みは御自分で、と」
「はぁ〜。つってもなぁ？」

確かにAと暮らし始めた当初、ハユンからも同じ事を言われちゃいたが、子供の頃から習慣化していたそれを早々に辞めることができないでいた。
　

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