〜紹介〜 5 ページ30
.
ヒョンは俺のグラスに当てて乾杯するとウィスキーを呷る。
「あの子の血、あれだけ質が良くて上玉じゃないのが嘘みたいだね」
「そうですね……」
ジニヒョンが半分ほどを喉に流し込んで、カランと氷を転がし、ヒョンが呟く。
「……あの子、長生きはできないと思う」
やはり気づいた。
数多く女の血の味を知るヒョンにはお見通しだった。
「いつも一人で全部済ませるユンギが僕に会わせたい人がいるなんて、珍しい事言い出すと思ったら。
ユンギの次の運命の
「それこそ運命……なんだろうな、と」
「本当に一緒になるの?」
「ええ」
「Aさんには?もう伝えたの?」
「いえ……これからです」
「そっか……子供は望めないかもしれないよ?いいの?それでも」
「ジニヒョンには申し訳ないと思ってます。
あいつは孤独なんです。両親を亡くし、身寄りもない。たった一人で親が遺した小さな家を必死で守ってるんです。
食う物にも着る物にも困るだろうに、家を守るために身を切ってるんです、あいつは」
「このままいけば、あいつは誰に看取られることなく生涯を終える。
でも俺は死なないから、あいつを一人にはしない。一人寂しく死なせはしない」
「……同情で添い遂げさせるのは違うよ?」
「そんなんじゃない。
あいつは……Aは怒気を解放した俺を見た後でも恐れなかった。俺が本性を現した目を見て、綺麗って……言ったんだ」
ひとしきり話をし終わると、グラスの氷が動く音だけが耳につくほどの静けさが戻る。
「──そっか。恐れなかったのか」
ヒョンはまた、静かにグラスを傾けた。
俺達だって自分が怖い。
簡単に怒気だけで人間を殺められる。人ひとり程度の血なら枯れるまで喰い尽くせる。その自覚があるから他者に恐れられ拒絶されれば、心は簡単に傷つき、その傷は深く残る。
身体や力は強くとも、心は何時までも弱く、脆い。
「ユンギが彼女に強い縁を感じたのなら、その直感に従えばいい。僕からは何も言えない」
だって特別なんだろ?
そう言って微笑むヒョンは少しだけ悲しげだった。
その顔は、この先に起こる事を予感しているかのようだった。
〜紹介〜
524人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あがしおん(プロフ) - かなこさん» コメントありがとうございます!ドキドキ&しっとりとした雰囲気を暫しお楽しみください♪ (2019年7月3日 7時) (レス) id: 97c4c54377 (このIDを非表示/違反報告)
かなこ(プロフ) - こんな僕でも…を読み返そうかなと思っていたらまさかのユンギ verの連載が始まっててすぐ読みました(*^^*)こっちのお話もドキドキさせてもらってます(〃ω〃) (2019年7月2日 23時) (レス) id: 9abaeb2ac4 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - miyaさん» コメントありがとうです!あぁっ!心臓大丈夫ですかっ?!男前ユンギさんが描けてるなら、もう作者いうことないです! (2019年6月25日 22時) (レス) id: 00967bc65a (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - たきゆさん» コメントありがとうございます! ええ、切ねぇです。正直切ねぇです。切ねぇですが!ボチボチゆるっと更新をお待ちいただけたらなぁ、と! (2019年6月25日 22時) (レス) id: 00967bc65a (このIDを非表示/違反報告)
miya(プロフ) - ユンギがぁ〜男前過ぎて、心臓が痛いです!! (2019年6月25日 21時) (レス) id: 3d660c888b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あがしおん | 作成日時:2019年6月5日 21時