愛しのJasmine

〜旅行〜　２ ページ22

.



……とでも言ってやろうかとも思ったが、Aの言動で多少なり傷ついた俺は、おそらく相当不機嫌な顔をしていたんだろう、

「ユンギ、ごめんなさい……謝るから……だから、そんなに怒らないで？」

泣きそうな顔をしたAに必死に謝られていた。

「じゃあ何で旅行が嫌なのか、ちゃんと話せよ。
　俺は匂いで感情が変わった事しか分かんねんだからよ？」
「う、うん……。それは分かってるけど」
「分かってんなら！隠そうとか思わねぇでちゃんと言えよ？！」

嘘を吐かれた事に、というより、旅行に行きたくない理由を隠された事にイライラしていた俺は、Aにその真意をしつこく尋ねていた。


「あ、あの、ね？旅行は好きなの」
「は？なら何で嫌そうにしたんだよ？」

矛盾を衝かれ押し黙り、目を泳がせたAが漸く口を開いたと思えば、

「……笑わないでね？」

何故かそんな前置きをした。

「……笑う？聞いてみなきゃ笑う内容かどうか分かんねぇよ」
「う……だよね…………あのね？私──」




　


「飛行機、怖いの」




「……は？飛行機が？……怖い？」


どんな問題を抱えているのかと思ったらこいつ──！

「……ぷっ！俺に噛みつかれて蝙蝠になりたがってたお前がか？」
「そ！それは迷信だってユンギが言ったからもう信じてないけど！
　とにかく私、子供の頃から飛行機が怖かったの！あんなでっかい鉄の塊が空を飛ぶのよ？！信じられないじゃないっ！
　だから自分の力で飛べたら自己責任だし信用性が増すっていうか、安心って言うか……」
「……お前、いつの時代の人間だよ！飛行機なんてバンバン飛び交ってるこのご時世に、そんな事で怖がるヤツがいるとはなぁ？」
「ここにいるんだから仕方ないじゃない！」
「ぶはっ！！んあはははは！！」
「あああもうっ！絶対笑われるから誰にも言いたくなかったのに！」


何とも可愛らしい悩みに、俺は久々盛大に腹を抱えて笑った。

〜旅行〜　３→←〜旅行〜　１

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す