20万ベリーの命綱 ページ6
「それで、引っ越して入院したあとお前の親父はどうなったんだ」
そう問いかけてきたゾロは、私の顔色を伺っているようにも見えた。
「なんとか一命を取り留めた。今もちゃんと生きてる。でも」
「でも？」
「腎不全になって、人工透析をしなきゃ生きられない身体になってしまったの」
ゾロが僅かに俯いた。
「病気になった父は漁師を辞めて、今は漁協でアルバイトをしてる」
ゾロも人工透析治療の大変さをある程度理解している様子だった。
人工透析は腎臓が正常に機能しなくなった患者に行われる治療で、血液を体内から取り出し、血中の老廃物などを人工的に浄化し、体内に戻すというもの。
腎臓が機能しなくなると人間は生きていられなくなるけれど、人工透析を続ければ生きることができる。父は1回5時間もかかるこの辛い治療を、週3回欠かさず受け続けることで命を繋いでいる。
「覚えてると思うけど、私のお母さん、私を出産したときに亡くなったって話したでしょ？」
「ああ。Aは男手ひとつで育てられてきたんだろ」
「そう。経済的に頼るあてもほぼなかった。ちょうど去年、私が18歳になった頃、治療費に充ててた漁師時代の貯金も、お母さんの保険金も底を尽きたんだ」
ゾロの動きが止まった。ただ、瞳だけは微かに左右に揺れている。
「……まさか、お前、それでこの仕事を？」
私は「そうだよ」と軽く答えた。
人工透析には莫大な治療費がかかる。聞くところによると治療費をほぼ負担してくれる国もあるらしいが、父の場合は毎月20万ベリーかかる。20万といっても半額で、もし国の補助がなければ40万払わなければならないところだった。
そのうえ、漁協でアルバイトをする父の収入は漁師時代の3分の1以下。
治療費の他に、私たちの生活費、今後突然必要になるかもしれない医療費の貯蓄分を稼ごうとなると、どうしても私が働きに出るほかない。
「親父は知ってんのかよ。その、Aがこういう仕事をしてんのは」
その問いには、思い切り首を横に振った。
「言うわけないじゃん！ 絶対に秘密にしてる」
私の声は自然と大きくなった。
「だって、私がデリ嬢やってるなんて知ったらお父さん、治療止めるって言い出すかもしれない。そしたらお父さんは……」
その先の言葉は喉の奥につかえて出てこなかった。
父まで失ってしまったら、本当に私はひとりぼっちにしなってしまう。
それだけは絶対に絶対に嫌だ。
「それなりに時給のいいバイトを見つけたことにして、夜勤もしてるのは深夜手当が出るからって嘘ついてる」
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miku(プロフ) - 桜さん» 最後まで読んでくださってありがとうございます！最近はなかなか執筆できていないのですが、今でもこうしてコメントをいただけるとまた時間のあるときに書いてみようかなという気になれます😭🫶🏻 (2022年11月14日 17時) (
レス) id: 761cc2fde5 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - とっても、素敵な作品でした。 これからも頑張ってください！ (2022年11月12日 22時) (レス) @page33 id: a028b5c607 (このIDを非表示/違反報告)
miku(プロフ) - 星猫さん» アニメ全然観てないんですよ、、ワンピ以外のジャンプ作品だったら銀魂と鬼滅くらいです (2021年9月8日 13時) (レス) id: fed98eab61 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 知ってるアニメは何ですか？ (2021年9月8日 7時) (レス) id: f84c743866 (このIDを非表示/違反報告)
miku(プロフ) - 星猫さん» 最初のコメントでこんな嬉しいお言葉をいただけるなんて！高評価までありがとうございます！！ (2021年9月8日 1時) (レス) id: fed98eab61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：miku | 作成日時：2021年9月4日 1時
