10歳のころ ページ5
「それは、くいなが亡くなった少し後にね」
「くいな」という単語を発したとき、わずかにゾロの眉毛がピクリと動いた。
「くいなが亡くなったちょうど2か月後くらいかな、私のお父さんが倒れたの」
私はそのまま続ける。
「ほら、当時はまだ10歳だったからさ、詳しいことはよく聞かされなかったんだけど、生死を彷徨うほど重篤な状態だったみたいで」
「……あの元気の塊みてェなAの親父が、か」
さすがのゾロも驚いたようで、しみじみと呟いた。
ゾロの言う通り、それまで私の父は風邪ひとつひかない丈夫な人で、漁師として毎朝休むことなく海へ出ていた。
「シモツキ村の医者じゃどうにもできないから、この島にある
私の家はゾロが通っていた道場である一心道場のすぐ近くにあった。
もちろん私は道場には通っていなかったけれど、道場の子達とはよくかくれんぼや鬼ごっこをして遊んでいた。
なかでも、道場唯一の女の子だったくいなとは特別仲がよかった。
くいなは私より歳が1つ上で、私のお姉さん的存在だった。
くいなと仲良くしていると、くいなとライバル関係だったゾロとも必然的に関わることが多かった。
正直言うと、最初はやんちゃで荒っぽいゾロのことが苦手だった。
「おい、くいな！ おれともう一度勝負しろ！！」と言って付いてくるゾロは、ただくいなと2人で遊びたいだけの私にとって邪魔な存在だったのだ。
それでも人というのは、なんだかんだずっと一緒にいれば心を開いてしまうものらしい。
そろそろお互いに男女を意識し始めるようなお年頃だったけれど、私はゾロに対しては飾らずありのまま接することができた。
次第に、ゾロは私にとってなくてはならない存在になっていった。
いつから恋心が芽生えたのかはわからない。
気づけば、いつもゾロに勝負を申し込まれ付きまとわれているくいなに対して、嫉妬さえするようになってしまった。
ゾロの視線の先にいるのは、いつもくいなだった。
口を開けばいつも「A」よりも先に「くいな」という名前が出ていた。
肝心のゾロ自身はくいなへの恋心に気づいていない様子だった。
でも、傍から見ていた私にははっきりとわかった。
ああ、ゾロが私に振り向いてくれることはないんだ──と。
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miku(プロフ) - 桜さん» 最後まで読んでくださってありがとうございます！最近はなかなか執筆できていないのですが、今でもこうしてコメントをいただけるとまた時間のあるときに書いてみようかなという気になれます😭🫶🏻 (2022年11月14日 17時) (
レス) id: 761cc2fde5 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - とっても、素敵な作品でした。 これからも頑張ってください！ (2022年11月12日 22時) (レス) @page33 id: a028b5c607 (このIDを非表示/違反報告)
miku(プロフ) - 星猫さん» アニメ全然観てないんですよ、、ワンピ以外のジャンプ作品だったら銀魂と鬼滅くらいです (2021年9月8日 13時) (レス) id: fed98eab61 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 知ってるアニメは何ですか？ (2021年9月8日 7時) (レス) id: f84c743866 (このIDを非表示/違反報告)
miku(プロフ) - 星猫さん» 最初のコメントでこんな嬉しいお言葉をいただけるなんて！高評価までありがとうございます！！ (2021年9月8日 1時) (レス) id: fed98eab61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：miku | 作成日時：2021年9月4日 1時
