2度目 ページ16
翌日、珍しくお泊まりコースの指名が入った。
店のスタッフからは「リボンちゃん最近調子いいじゃん」なんて言われる。
前回のお泊まりコースは幼なじみと何もせずただ一晩過ごしただけ、だとは口が裂けても言えないけれど。
私はいつもより丁寧にファンデーションを塗り、いつもより慎重にアイラインを引いた。アイシャドウのラメも多めに付けた。
お風呂の湯気や汗で崩れないよう、使っている化粧品はすべてウォータープルーフだ。
泊まりで指名してくれるお客様はありがたい。
なんとしてでもリピーターにしたい。
そう意気込んだ私は、鏡の前で頬を軽く叩いて気合を入れた。
ところが、ホテルのドアを開けた途端、お仕事スマイルが一瞬にして真顔になる。
「はい……？」
部屋で待っていたのは、ゾロだったのだ。
「なーに驚いてんだ」
若干のからかいを含んだ口調。
前回とは別の偽名で予約されて、まさか客がゾロだとは気づかなかった。
おまけに、指名なしで偶然出会った前回とはちがって今回は指名での利用だ。
「あの、こっちはこの間しばらく会えないくらいの覚悟でお別れしたんだけど」
「なんだ不服か」
「……別に、ゾロに会いたくないってわけじゃない。でもね」
私の気持ちを考えてほしい、デリ嬢として大好きな人に会う気持ちを──喉まで出かかったその言葉を飲み込み、代わりの言葉を継ぐ。
「言ってくれたら普通に会うのに。それとも今回はデリヘルの
「うるせェ。んなわけあるか！」
「じゃあなんで」
「普通に会って『親父の治療が大変だろうから』つっておれが金を渡したって受け取らねェだろ、お前は」
「そりゃそうでしょ」と即答した。
「だが、仕事として報酬を得るという形なら躊躇なく受け取れるだろ？」
返す言葉に困っていると、意地悪な顔で畳みかけてくる。
「おれをNG客に指定してねェってことは、指名しても問題ねェよな？」
「そ、それは、あれからバタバタしてて。NGにしてくれって店に伝え忘れてただけで」
これは本当だった。まさかゾロに指名されるとは思ってもみなかったけれど。
ゾロは、これ以上言い合っても無駄だと思ったのか、何も言わずに1人で部屋の奥に入っていく。
「ちょっと！ まだ話は終わってないから」
咄嗟に追いかけると、床の上には、見るからに重たそうなダンベルがいくつも置かれている。
それは、デリ嬢と寝ないための暇つぶしであるようだった。
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miku(プロフ) - 桜さん» 最後まで読んでくださってありがとうございます！最近はなかなか執筆できていないのですが、今でもこうしてコメントをいただけるとまた時間のあるときに書いてみようかなという気になれます😭🫶🏻 (2022年11月14日 17時) (
レス) id: 761cc2fde5 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - とっても、素敵な作品でした。 これからも頑張ってください！ (2022年11月12日 22時) (レス) @page33 id: a028b5c607 (このIDを非表示/違反報告)
miku(プロフ) - 星猫さん» アニメ全然観てないんですよ、、ワンピ以外のジャンプ作品だったら銀魂と鬼滅くらいです (2021年9月8日 13時) (レス) id: fed98eab61 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 知ってるアニメは何ですか？ (2021年9月8日 7時) (レス) id: f84c743866 (このIDを非表示/違反報告)
miku(プロフ) - 星猫さん» 最初のコメントでこんな嬉しいお言葉をいただけるなんて！高評価までありがとうございます！！ (2021年9月8日 1時) (レス) id: fed98eab61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：miku | 作成日時：2021年9月4日 1時
