2001回目の決闘 ページ12
「え？ 行けないってどうして」
「今日、道場でゾロに2001回目の決闘を申し込まれちゃったの。どうしても今夜じゃなきゃ嫌だって聞かなくて……」
こういうことは今まで何度もあった。
私は迷いながらも唇を噛んで頷いた。
「……わかった。まあ、お祭りは明日もあるし！ 明日行ければいいよ」
上手く笑えているかはわからなかった。
「ありがとう。明日は絶対に！ 楽しみにしてて！！」
くいなはそう言って、何度も私に頭を下げた。
「今夜は木刀じゃなくて真剣で勝負するんだ。絶対に負けられない。まあ、いつも通り私が勝つけどね」
強がるくいなの表情はどこか寂しげだった。
近ごろ初潮を迎えたというくいなは「女の子じゃ世界一は無理」と私の前でこっそりと弱音を吐くことがあった。
私はくいなの肩をぽんと叩く。
「行ってらっしゃい！ 頑張って」
「うん。また明日！ Aのかわいい浴衣姿、期待してる！！」
手を振って駆け出した。
──そこで、私は目覚めた。
暗く静まり返った部屋に、換気扇の回る音とゾロの寝息だけが響く。
枕元のライトを付け、目覚まし時計を確認すると、6時半過ぎだった。
ついでにゾロが寝るソファーのほうへ視線を移した。
ぐっすり眠っていても、三本の刀は肌身離さず持っている。
体勢を仰向け変え、天井を眺める。
景色もセリフも出来事も、すべて本当に経験したこととまったく同じ夢で、まるでタイムスリップしてきたかのような気分だ。
“行ってらっしゃい！ 頑張って”
“うん。また明日！ Aのかわいい浴衣姿、期待してる！！”
これが、くいなと私が交わした最後の会話になってしまった。
明日こそは祭りに行こうと言ったのに、翌日の午前中、家の階段から落ちたくいなは帰らぬ人となった。
今でもときどき考えることがある。
もしあのとき、私が無理を言って祭りに連れていったら何かが変わっていたのかな、とか。
祭りじゃなくて、午前中からどこかへ遊びに行こうと誘っていたら避けられたことなのかな、とか。
剣の話やその日道場で起きた話でゾロとくいなが盛り上がっていると、なんだか私だけ取り残されたような気分になることもあった。
負けず嫌いな2人をなだめるのも一苦労だった。
それでも、3人でいると自然と笑顔になれて、ただただ楽しかった。
だから、くいなには生きていてほしかった。
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miku(プロフ) - 桜さん» 最後まで読んでくださってありがとうございます！最近はなかなか執筆できていないのですが、今でもこうしてコメントをいただけるとまた時間のあるときに書いてみようかなという気になれます😭🫶🏻 (2022年11月14日 17時) (
レス) id: 761cc2fde5 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - とっても、素敵な作品でした。 これからも頑張ってください！ (2022年11月12日 22時) (レス) @page33 id: a028b5c607 (このIDを非表示/違反報告)
miku(プロフ) - 星猫さん» アニメ全然観てないんですよ、、ワンピ以外のジャンプ作品だったら銀魂と鬼滅くらいです (2021年9月8日 13時) (レス) id: fed98eab61 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 知ってるアニメは何ですか？ (2021年9月8日 7時) (レス) id: f84c743866 (このIDを非表示/違反報告)
miku(プロフ) - 星猫さん» 最初のコメントでこんな嬉しいお言葉をいただけるなんて！高評価までありがとうございます！！ (2021年9月8日 1時) (レス) id: fed98eab61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：miku | 作成日時：2021年9月4日 1時
