10万ベリー ページ18
「は？」
首を傾げるゾロだったが、数秒前まで私の額に触れていたその手を見てピンときたようだ。
「あっ、悪ィ、これは、そういうんじゃなくて、本当に
私の顔と自分の手を交互に見ながら歯切れ悪く答える。
私の口からは思わずため息が漏れた。
そういうところだ。
ゾロは恋愛体質ではない分、逆に、女の子を翻弄させるようなことを平気でやってのけてしまう。
そういうところがずるい。
きっと、今まで私に見せてきた優しさも、全部、ゾロにとって特別な意味はないのだろう。
「それは別にいいの。私も気にしてない」
さらっと嘘をついて微笑んだ。
「ふと思っただけ。こんな風にゾロを頼るのは依存してるみたいで嫌だなって。だから帰る」
壁掛けの時計を一瞥する。ここに来てまだ1時間も経っていない。
鞄の中から10万ベリーを取り出して、それをテーブルの上に置いた。
「今日の分のお代は要らないよ。店にはキャンセルになったって説明しとくからさ」
黙って話を聞いていたゾロが、ようやく立ち上がった。
ゾロはテーブルの上の10万ベリーを荒っぽく掴み、私の前に突き出してくる。
「帰るのは構わねェが、これは受け取れ」
「いい」
「いや、受け取れ」
しばらくコントのような押し問答が続く。
「その優しさだけ受けとるから！」
私は半ば強引にゾロを突き放した。
「……多分、これ以上ゾロの優しさに甘えてたら、まともに仕事できなくなる」
吐き捨てたその言葉で、ゾロが急に静かになった。
そして、私が電伝虫を手に取るよりも先にフロントへ連絡し、ドアロックを解除してくれた。
私は電伝虫に向かって話すゾロの横顔を目に焼き付けるつもりで見つめた。
「最悪な再会だったけどね、こうしてまたゾロに会えてよかった」
ゾロの頬が少し緩んだ。
「ゾロとくいなと私、3人のなかで1番弱いのは私。これは本当」
目頭が熱くなってきた私は、ゾロから背を向け、ドアに向かって言う。
「でも私ね、ゾロが思ってるより弱くないよ。強く生きてる」
だから心配しないで、という思いを込めてドアを開けた。
薄暗い廊下を駆け出す。
決して、振り返らない。
エレベーターの中で、店に連絡をしようと鞄の中を覗いた。
鞄を覗き込んだ瞬間、息を飲んだ。
そこには、握った跡のある10万ベリーがいつの間にか戻してあったのだ。
「バカ……要らないって言ったのに」
ガタンとエレベーターの壁にもたれかかる。
好きという気持ちと涙が溢れて止まらなかった。
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miku(プロフ) - 桜さん» 最後まで読んでくださってありがとうございます！最近はなかなか執筆できていないのですが、今でもこうしてコメントをいただけるとまた時間のあるときに書いてみようかなという気になれます😭🫶🏻 (2022年11月14日 17時) (
レス) id: 761cc2fde5 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - とっても、素敵な作品でした。 これからも頑張ってください！ (2022年11月12日 22時) (レス) @page33 id: a028b5c607 (このIDを非表示/違反報告)
miku(プロフ) - 星猫さん» アニメ全然観てないんですよ、、ワンピ以外のジャンプ作品だったら銀魂と鬼滅くらいです (2021年9月8日 13時) (レス) id: fed98eab61 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 知ってるアニメは何ですか？ (2021年9月8日 7時) (レス) id: f84c743866 (このIDを非表示/違反報告)
miku(プロフ) - 星猫さん» 最初のコメントでこんな嬉しいお言葉をいただけるなんて！高評価までありがとうございます！！ (2021年9月8日 1時) (レス) id: fed98eab61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：miku | 作成日時：2021年9月4日 1時
