【文スト】正体不明の天才ディーラー

第一章・彼の知り合い　プロローグ ページ1

探偵社に舞い込んだ一つの依頼。
《要人が行方を晦ませた(くらませた)》というものだった。

その要人は大のカジノ好きで、全勝無敗ということで有名な人間だ。
しかし、数日前に、ただの一敗で多額の借金を背負った。
通っていたカジノは国外。秘密裏に動かねば国際問題になりかねないという。


「なんだか、凄い依頼が来ましたね……」


会議室で不安そうに語る青年は中島敦。白髪の新人探偵だ。
その向かいにいるのは蓬髪の男・太宰治。


「……カジノか……」


考えるように顎に手を当てた太宰は、何か思いついたようにくるりと中島の方を向いた。


「よし、敦君。私はこれから美女を探して心.中してくるよ」


返事も聞かず笑顔で社を飛び出す太宰。

中島が叫ぶまで残り五秒……





＊





――カジノ・《Drosera Peltata(ドロセラ ペルタータ)》――



「っくしゅん！」


バックヤードで休憩をしながらくしゃみをするのは、専属ディーラー・小泉八雲。
カジノ好きに知らぬ者はいないほど有名である小泉は、《天才ディーラー》、そう呼ばれている。

経歴不明、年齢不明、性別も不明な其れは、いつも静かに笑っている。ただ、それだけだ。





「……なんか、嫌な予感がする……」

小泉八雲→

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