虚勢〈桐生戦兎〉* ページ6
それは少し前のお話。
ひょんなことで怪我をして、戦兎に手当てをしてもらっているときのことだった。
｢お前も東都の人達も、俺のせいでこんな目に…｣
消毒液を塗りながら、また自分を責め始める戦兎の頭を無事な方の手で叩く。
｢あんたしつこい。始まっちゃったもんはしゃーないでしょう｣
東都と北都の戦争が始まってからずっとこんな調子だ。こっちが気が滅入る。
何度か励ましてやろうかとも思ったけど、無責任なことは言えないと我慢してきた。
｢お前は他人事だからそんなことが言えるんだろ｣
そんなことを言いながら、戦兎は東都の仮面ライダーとして戦う気はないという。
スマッシュや仮面ライダー。
その悲劇の根源となったのは元葛城巧である戦兎だ。
それを一番よく知っているから、戦兎はこの戦争の惨事から目を反らしているのだ。
｢そうだよ他人事だよ。だからこうしてあんたに文句言えるんだから｣
戦兎が持っているガーゼをひったくって自分で傷口にあて、テープで固定する。
黙ってそれを見ている戦兎にため息をついた。
いつも無駄に明るくてうるさいくせに、こういうときは別人みたいに暗くなるのだ、この男は。
｢戦兎、あんたどうしてほしいの？
慰めてほしい？それとも責めてほしい？｣
肩を揺らすと私の手を払い、立ち上がって自分の作業机に向かう。
気を落ち着かせる方法がそれしかないのかもしれない。
｢そうやって逃げるんだ｣
ぼそりと呟くと、聞こえたらしく戦兎の肩がピクリと動いた。
｢…じゃあ｣
私に背を向けたまま
｢じゃあお前はどうしろって言うんだよ！！｣
戦どうしたらいいのかわからないという戦兎の悲痛な叫びだった。
けどそれはまるで子供の癇癪のようでもあった。
｢ちゃんと自分と向き合いなよ！！｣
負けじと私も大声になる。
｢この戦争があんたのせいじゃないなんて、私は思わない｣
こういうときに言うべき言葉はきっと、戦兎のせいじゃないとか、戦兎が気に病む必用はないとか、そんなことだ。
でもそんな言葉は戦兎のためにはならない。
だから私は戦兎を慰めたりしないのだ。
だって今甘えさせたら、きっとダメになる。
｢葛城巧はあんたで、桐生戦兎もあんたなの｣
私が知っているのは桐生戦兎。
葛城巧じゃない。
｢万丈が指名手配されたのも、万丈の彼女さんが死んだのも、佐藤太郎が殺されたのも、全部あんたの研究が引き起こしたこと。
記憶がないなんて理由にも言い訳にもならない｣
戦兎の気持ちがまた沈んでいく。
それでも、変な慰めで戦兎に無責任な人間になってほしくなんかないんだ。
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デリート(プロフ) - クリオネf。tさん» 了解です！書いたことがないので上手くできるかわかりませんが、頑張ります！ (2019年3月24日 2時) (
レス) id: 94669fbf54 (このIDを非表示/違反報告)
クリオネf。t - 永夢君がお相手で女攻めとか大丈夫ですか？無理ならそれでいいので！ (2019年3月24日 1時) (レス) id: fe04442c66 (このIDを非表示/違反報告)
デリート(プロフ) - 永流/Eruさん» ありがとうございます。どうかなーと思いながら書いていたので、そう言っていただけると嬉しいです。 (2019年2月8日 22時) (レス) id: 94669fbf54 (このIDを非表示/違反報告)
永流/Eru(プロフ) - ビルド感動しました。切ない終わり方メッチャ好きです。m(._.)m (2019年2月4日 0時) (レス) id: d36ee27f29 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：デリート | 作成日時：2018年2月19日 1時
