・ ページ40
言った直後に後悔が込み上げてくる。
どうしよう。もしこれで否定なんてされたものならば、しばらく立ち直れそうにない。たとえ俺がAにとって"友達"でしかないのだとしても、それでも一番でいたいから。
だが、そんな心配は杞憂に終わった。
目を合わせれば、Aの顔が真っ赤に染まる。それは少なくとも意識してもらえているということで。
「う、うん。流石に家には戦兎しか入れないよ。それに一緒に遊びに行くのも戦兎とぐらいしか…って下ろしてよ！」
本当はそのままがよかったけど、じたばた暴れるものだから下ろしてやる。それでも依然顔は赤いまま。
脈なんてないのだとがっかりしていたけれど。もしかして、案外俺が見逃していただけなんじゃないのか。
「A？」
「な、何…？」
名前を呼ぶと、さっきのこともあって警戒しているのか1歩後ろに下がる。
何もしないよ。そう言うとまた俺のすぐ隣に座った。
気を許してもらえてるのだと喜ぶ反面、信用し過ぎだと可笑しくなってくる。さっきやらかした奴が言うことじゃないけど。
「次どこ行く？」
「こ、コーヒーカップ…」
観覧車から降りてもまだ、Aはなんだかぎくしゃくしていた。
「えっと、私の担任してる隣のクラスの先生に、お付き合いしてくれませんか…って言われたの。戦兎、それ聞いてどう思う？」
次のアトラクションに向う途中にそんなことを言い出すA。遠回しに聞こうとしているつもりなのかもしれないけれど、わかりやすすぎる。
そんなの苛々するに決まってるでしょうが。
答えなんて決まりきっていたけれど、その通りには答えなかった。
「言いたいことちゃんと言って？」
少し意地悪をしてそう言ってみる。Aの聞かんとしていることはわかるけれど、素直に答えてもつまらない。これがさっきまで余裕のなかった男のすることか、とは自分でも思っている。
しばらくは言いにくそうにしていたものの、恥ずかしいのか途切れ途切れに言ってくれた。
「せ、戦兎…のこと、好き。なんだけど、戦兎はどうなのかな…って」
その言葉に、目をぱちくりさせる。
これだから天然っ子は。
あれで気がない奴がいたら、それはただの遊び人だ。もちろん、俺は遊び人なんかじゃない。
「好きだよ。忘れられても、また好きになるぐらい」
ずっと言えなかった言葉を口にすると、やっぱりどこか照れくさかった。
「忘れられても…？」
「例えだよ、例え」
不思議そうに俺を見るAの額に、触れるだけのキスを落とす。人前なんて関係ない。だってこんなにも君が愛しいのだから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 37人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
デリート(プロフ) - クリオネf。tさん» 了解です！書いたことがないので上手くできるかわかりませんが、頑張ります！ (2019年3月24日 2時) (
レス) id: 94669fbf54 (このIDを非表示/違反報告)
クリオネf。t - 永夢君がお相手で女攻めとか大丈夫ですか？無理ならそれでいいので！ (2019年3月24日 1時) (レス) id: fe04442c66 (このIDを非表示/違反報告)
デリート(プロフ) - 永流/Eruさん» ありがとうございます。どうかなーと思いながら書いていたので、そう言っていただけると嬉しいです。 (2019年2月8日 22時) (レス) id: 94669fbf54 (このIDを非表示/違反報告)
永流/Eru(プロフ) - ビルド感動しました。切ない終わり方メッチャ好きです。m(._.)m (2019年2月4日 0時) (レス) id: d36ee27f29 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：デリート | 作成日時：2018年2月19日 1時
