追試前の一休憩＜常磐ソウゴ＞ ページ37
｢調子はどう？浪人崖っぷちの常磐ソウゴ君｣
そんな声が聞こえて顔を上げる。いつの間に入ってきたのか、ひとりきりだったはずの教室の中にAがいた。
クラスは違えどもやはり友達。心配して来てくれたんだろうか。
｢まだ王様になりたいって言ってるみたいだね｣
甘い期待を抱く俺に、Aはそう言ってクスクス笑う。ムッとしてそっぽを向くと、笑うのをやめた。
｢馬鹿にしてるわけじゃないよ。相変わらず変だし、面白いなあって｣
久しぶりに話しているというのに言われるのはそんなことばかりで、ますます機嫌が悪くなっていくのを感じる。
横目でちらりと見るとAはにこにこしていて、何を考えているのかさっぱりわからなかった。
Aに初めて会ったのは入学式の日のこと。
たまたま席が隣になって、自然とよく話すようになった。席替えをした後でもそれは変わらなくて、クラスが変わるまで周りからはよく冷やかされた。俺は満更でもなかったけど、Aはどうだったんだろう。
先生を待つ間、長い長い沈黙が流れる。
その中で先に口を開いたのはAだった。
｢ソウゴが王様になったら、どんな世界になるかな｣
ソウゴが王様なんだから、きっと優しい世界だよね。
そう言って俺の頭を撫でた。それはまるで俺のことなんて全く意識していないと言われているみたいで。
｢もし俺が、残忍非道で、最低最悪で、魔王…って呼ばれるような王様になったら、どうする？｣
鼻歌を歌うAに、ふとそんなことを聞いてみる。
Aはオーマジオウのことも、俺が仮面ライダーだってことも知らない。
知ったら、どうするんだろう。
悲しむ？幻滅する？それとも怒る？
いろいろ想像はできるけど、そのどれも、俺には嬉しくない未来だ。
俺は一度、オーマジオウの未来を認めかけた。最高最善の魔王になるって決めたのに、諦めかけた。その"嬉しくない未来"を、受け入れかけた。
なかなか返事が返ってこなくて｢困らせたかな｣なんて考えていると、しばらくしてようやくAが答えた。
｢そんなこと絶対あり得ないよ｣
少なくとも、私はそう思うな。
そう言って、やっとAを見られた俺の額をデコピンで弾く。
｢…だよね、ありがとう｣
久しぶりに話した彼女は、やっぱり変わってない。
｢なんか力出てきた。追試の未来も見えたし、何とかなる気がする！｣
｢よし、その意気だ！｣
その数時間後、Aがクジゴジ堂に
｢調子はどう？追々試勉強中の常磐ソウゴ君｣
なんて言いに来る未来は、俺には見えていなかった。
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デリート(プロフ) - クリオネf。tさん» 了解です！書いたことがないので上手くできるかわかりませんが、頑張ります！ (2019年3月24日 2時) (
レス) id: 94669fbf54 (このIDを非表示/違反報告)
クリオネf。t - 永夢君がお相手で女攻めとか大丈夫ですか？無理ならそれでいいので！ (2019年3月24日 1時) (レス) id: fe04442c66 (このIDを非表示/違反報告)
デリート(プロフ) - 永流/Eruさん» ありがとうございます。どうかなーと思いながら書いていたので、そう言っていただけると嬉しいです。 (2019年2月8日 22時) (レス) id: 94669fbf54 (このIDを非表示/違反報告)
永流/Eru(プロフ) - ビルド感動しました。切ない終わり方メッチャ好きです。m(._.)m (2019年2月4日 0時) (レス) id: d36ee27f29 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：デリート | 作成日時：2018年2月19日 1時
