素直になれば＜桐生戦兎＞ ページ36
｢戦兎！聞いて聞いて！！｣
どたばたと騒がしく秘密基地に駆け込んでくるA。
静かに入ってきなさいよ、今大事なところなんだから。そう言ってAを迎える。
Aが来るのが楽しみでいつもこの時間帯になるとそわそわしてしまうなんて、何だか格好悪くて言えなかった。
マスターに拾われてから、マスターの昔馴染みの娘だという彼女に惹かれるまでそう時間はかからなかった。
Aの方も俺によく会いに来てくれて、一緒にいすぎて、心のどこかで油断していたんだろう。きっとAも俺のことを好いてくれているんだろうと。
だけどそれが自惚れだとわかるまでにも、あまり時間はかからなかった。
｢あのね、同僚に連絡先聞かれたの。｢今度一緒に食事でもどうですか？｣って｣
はにかんだように笑うAを見て悟ってしまった。
俺はAにとって、ただの仲のいい友人程度でしかなかったのだと。
いつも子どもっぽい無邪気な顔で笑っているAが、"女性の"顔をしていた。
俺にはそんな顔、一度も見せたことなんてなくせに。
｢よかったな｣
そんな心にも思っていない言葉を送って、いつも通りAと下らないことを話す。いつも通りの笑顔を無理矢理作って話す。
初めて会ったときは、何て騒がしい人なんだろうと思った。
どうでもいいようなことで落ち込んだと思えば、急に元気になって｢明日こそは！｣なんて言って。だけどいつだったか、そのころころ変わる百面相を微笑ましく見ている自分がいることに気づいた。
俺がビルドだと知ったときはすごいねと何度も言ってくれて、ビルドでいることが誇らしかった。
Aがいれば何でもできるような気さえした。
疲れたときだって、辛いときだって、Aの声を聞けば何ともなくなる気がした。
話を聞いていた美空と万丈が何か言いたげな目で俺を見る。何を言おうとしているかは聞かずともわかった。
(いいんだよ、これで)
どんなに苦しくても、Aの幸せを壊す気になんてなれない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 37人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
デリート(プロフ) - クリオネf。tさん» 了解です！書いたことがないので上手くできるかわかりませんが、頑張ります！ (2019年3月24日 2時) (
レス) id: 94669fbf54 (このIDを非表示/違反報告)
クリオネf。t - 永夢君がお相手で女攻めとか大丈夫ですか？無理ならそれでいいので！ (2019年3月24日 1時) (レス) id: fe04442c66 (このIDを非表示/違反報告)
デリート(プロフ) - 永流/Eruさん» ありがとうございます。どうかなーと思いながら書いていたので、そう言っていただけると嬉しいです。 (2019年2月8日 22時) (レス) id: 94669fbf54 (このIDを非表示/違反報告)
永流/Eru(プロフ) - ビルド感動しました。切ない終わり方メッチャ好きです。m(._.)m (2019年2月4日 0時) (レス) id: d36ee27f29 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：デリート | 作成日時：2018年2月19日 1時
