ごめん〈桐生戦兎〉*(仲のいいの続き) ページ26
なんでお前がそっちにいるんだよ。
｢…戦兎｣
Aが俺を見ている。
俺の名前を呼ぶ。
｢私、こっち側の人間…ううん、兵器だから｣
兵器ってどういうことだ？
こっち側の人間って何だよ。
信じたくない。
夢であってほしい。こんなのは幻だ。
否定しても否定しても目の前の悪夢は消えない。逆に俺に現実を叩きつける。
｢なんでエボルトと一緒にいるんだよ…！｣
＊＊＊＊＊＊
｢戦兎お肉とって｣
肉を自分にとれと言うAの皿を見る。
明らかに肉と野菜の比率がおかしかった。というかどれだけ積み上げる気だ。
｢野菜も食べないと体壊すでしょうが。ほら｣
｢ちゃんと食べてるよ｣
ぶーぶー文句を言うAの皿に無理矢理手近にあったピーマンを乗せる。
お皿に乗せてしまえば、なんだかんだ言って美味しそうに食べている。
｢お前ら兄妹かよ｣
見ていた万丈が俺に向かってそう言う。
Aと顔を見合わせると、それもいいかもねと言い出したものだから思わず顔をしかめた。
嫌というわけでもないが抵抗がある。
Aとはこのまま、お互い何なのかよくわからない関係でありたい。
意地を張り出すと口が悪くなるAだが、俺の大事な仲間であり、友達であり、妹のような存在だ。
(そんなに今と変わらないか)
隣でばくばくと肉を食べ続けるAを見ると楽しそうに笑った。
いつの間にこんなに子供っぽくなったのだか。
エボルトとの戦いもいよいよ最終章に近づいてきた。
俺が甦らせてしまったものは、俺がこの手で終わらせる。これ以上あいつの好きにはさせない。
万丈の冤罪晴らし、マスターの裏切り、北都との戦争、西都との戦争、ハザードトリガー、エボルトの覚醒。
思い返せばいろいろとあった。
けどその度に仲間が増えた。
葛城巧のままでいたらきっとこんな気持ち、わからなかっただろう。
｢A、喉にでもつめたか？｣
さっきまでひたすら食べ続けていたAの動きが止まった。
どうせ勢いよく食べすぎて喉につまったのだろつと思い水を汲みに行こうとすると、小さくなんでもないと答えた。
｢ちょっと電話かかってきたから抜けるね｣
Aはそう言って逃げ出すようにその場を離れた。
残ったのは少しの肉が残った皿。
＊＊＊＊＊＊
昨日は普通だった。最後を除いては。
あの後Aから電話がかかってきて、用事があるからこのまま帰ると言われた。
そのとき俺は失念していた。
Aの家は倒壊している。帰る場所などない。
何故こんな簡単なことに気づかなかったのだろう。
後悔先に立たずとはよくできた言葉だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 37人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
デリート(プロフ) - クリオネf。tさん» 了解です！書いたことがないので上手くできるかわかりませんが、頑張ります！ (2019年3月24日 2時) (
レス) id: 94669fbf54 (このIDを非表示/違反報告)
クリオネf。t - 永夢君がお相手で女攻めとか大丈夫ですか？無理ならそれでいいので！ (2019年3月24日 1時) (レス) id: fe04442c66 (このIDを非表示/違反報告)
デリート(プロフ) - 永流/Eruさん» ありがとうございます。どうかなーと思いながら書いていたので、そう言っていただけると嬉しいです。 (2019年2月8日 22時) (レス) id: 94669fbf54 (このIDを非表示/違反報告)
永流/Eru(プロフ) - ビルド感動しました。切ない終わり方メッチャ好きです。m(._.)m (2019年2月4日 0時) (レス) id: d36ee27f29 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：デリート | 作成日時：2018年2月19日 1時
