番外編65話 ページ6
叱られながらも笑い声を上げて走っていく子供たち。
「もう返事ばかりなんだから」
図書館職員リナは腕を組みながら大きなため息。
「騒いだら言ってね。注意するから」
「ありがとう」
子供たちがどんなに騒ごうと走り周ろうと小峰の耳には届かない。
不安で頭の中はいっぱいで他に気を留める余裕はなかった。
気が付けば図書館の窓から西日が入り込む時間になっていた。
家に帰らなければ……。
椅子から立ち上がる。
目に映ったのはここより離れたテーブルで本を読む小さな男の子。
先程走り周っていた男の子の一人だ。
他の子の姿は見えない。
「お帰り？」
「あっうん」
カウンターに借りる本を出す。
「今日は少し遅い帰りなのね。バスはある？」
「大丈夫。それよりリナ……あの子一人でいるけどお友達は？」
「あの子？あぁヒロね。この時間だし友達は家に帰ったのよ」
「あの子は?」
「両親が働いていて家に一人になるらしくて……寂しいから閉館時間までいるのよ」
「へぇ……そうなんだ。あの子はヒロって名前なんだね」
「日系人よ。あらあなたもよね？」
「僕は純血日本人だよ」
心の中でざわめくものがある。
日系人。
子供。
両親が共稼ぎ。
あの子を差し出せば自分は助かる。
考えちゃいけない。
狙いを定めてはいけない。
頭に過った考えを断ち切る様に図書館を出る。
家に戻ってもずっとヒロという子供の事を考えていた。
どうする。
どうする。
どうする。
答えを出すのが怖い。
食事の時も両親と話している時も布団にもぐりこんでもグルグルとまとまらない考えに悩まされる。
気が付けば朝。
知らぬうちに眠りに落ちていた。
身支度を整えると隣町の図書館へ向かう。
図書館職員リナとあいさつを交わし、いつも座っている席に腰を下ろす。
あの子は……ヒロは今日も来ているのだろうか？
昨日聞こえていた賑やかな笑い声はない。
いないのか？
フロアにも姿はない。
本棚に目線を移せば、小さな姿を見つける。
腕を伸ばし、本を取ろうとしていた。
「これ？」
代わりに取ってやる。
「ありがとう！」
乗り物の図鑑。
「船が好きなの？」
「船も列車も飛行機も全部好き」
自分と同じ黒い目の子供。
「そっか、お兄ちゃんも好きだよ」
「そうなの？」
「うん」
ヒロの頭を撫でて今までいた席に戻る。
するとヒロも後について来て隣に座った。
「一緒に座ってもいい？」
「いいよ」
並んで読書の時間を楽しんだ。
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むつき(プロフ) - ｒｉｏさん» そうですね、まさちゃんと皆が出会えて本当に良かったです。どんなに傷を抱えていても前を向いて歩んで行けるはず！読んでくれてありがとう！ (2017年7月12日 22時) (
レス) id: f36c77de6f (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - はぴともさん» はぴともさん……大好きって告白されちゃった。いや違う違う(笑)兄弟たちを大好きになってくれて感謝です！ (2017年7月12日 22時) (レス) id: f36c77de6f (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - のんさん» お兄ちゃんたちの優しさが弟の愛が雅ちゃんの心を開いたのでしょう。二人ともやっと助け出されましたよ！ (2017年7月12日 22時) (レス) id: f36c77de6f (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - 沙羅さん» まーくんがしゃべりましたよーーー。和ちゃんもご機嫌です。小さくても兄弟たちは共に助け合います！ (2017年7月12日 22時) (レス) id: f36c77de6f (このIDを非表示/違反報告)
ｒｉｏ(プロフ) - 泣いちゃいました。まーくんがしゃべった。隠し事してる最中だけど、気を許せて少しでも心開ける人たちに出会えて良かった。怖いのに最後までまだ出てこない潤くんのことも想って生きることを諦めないでいてくれて、智君が読者の代わりに制裁してくれました！流石長男 (2017年7月12日 18時) (レス) id: bfae0dae1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むつき
| 作成日時：2016年10月23日 0時
