番外編57話 ページ48
夜もふけて。
歓楽街はにぎやかで多くの人々が行き交う。
仕事を終えた坂本は井ノ原に指定されたBarへ向かっていた。
少し古いビルの地下。
薄暗い階段を降りるとシックなドアがある。
ゆっくりとドアを開けると外の賑やかさとは真逆で落ち着いた空気。
少し抑えられた照明。
会話をさえぎらない程度の音量で流れている音楽。
居心地の良い空間がそこにはあった。
カウンター席の隅に座っていた井ノ原が軽く手を上げた。
「待たせた」
「そんなに待ってい兄よ」
井ノ原の隣に座る。
「何を飲む？」
「井ノ原さんは水割り？同じのを」
「長野、俺と同じの一つ」
マスターが小さく頷く。
「煙草はいい？」
坂本はカンターの中のマスターにたずねた。
灰皿が差し出される。
上着のポケットから煙草を取り出す。
「あんた煙草吸いか」
「いる？」
煙草を向けられるが井ノ原は丁重に断る。
「煙草はやめた」
「健康のため？」
「いや……煙草の香りを体につけたくなくてさ」
理由に坂本は興味を持ったようだ。
からかい半分に聞く。
「女が嫌だって？」
「いや……あの子が怯える」
あの子。
彼女ではない。
それは多分、
「施設の子？」
「さすが刑事さん、ご名答」
ボランティア先の児童施設の子供たちの為に禁煙中らしい。
「もう一つ察しているけど。今日、飲みに誘ったのは俺に用事があったからだろう？」
正解と笑う井ノ原。
「坂本さんが准一と約束をしたからさ」
約束？
「翔と雅紀をアメリカへ連れて行くのを考えるって話」
確かに考えると約束した。
現実的に親族でない翔たちを引き取ることは難しいが。
「結果の見えている約束だけどさ、真剣に考えるんだろう？だから聞いて欲しい話がある」
坂本の前にグラスが置かれる。
「話？」
「翔と雅紀の事だ。あの子らの事を知った上で考えて欲しいんだ。」
「あの子らの事って……」
甥の准一が弟のように可愛がっている二人の子供の過去を知る。
グラスの中の氷が融けカランと動いた。
話を聞き終わって琥珀色のウィスキーを喉に流す坂本。
「真剣に考えさせてもらう」
「あぁ頼む。あんたにとって准一が大事な存在であるように俺にとってもあの子たちはそうなんだ」
「井ノ原さんは……熱い人だな」
「そうでもないさ。俺の話を聞いてもらったお礼に仕事の愚痴を聞くよ？」
「え？」
「行き詰ってんだろ？日に日に追い詰められている目をしてるし」
灰皿に置いていた煙草の灰が落ちた。
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ゆきんこ。(プロフ) - ずっとずっと、この作品を、むつきさんを探していました。前に1度むつきさんのお話を読んだ時にお気に入り設定をしたのですが、そのアカウントがログインできなくなってしまい(記憶力のせい)新しいアカウントを作ってから探し続けてたんです！見つけられてよかった。 (2016年9月16日 23時) (
レス) id: cf8d713ce4 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - やみぃ〜さん» コメントありがとうございます。予定より壮大になっております！頑張りますので見守っていてくださいね！ (2016年9月16日 21時) (レス) id: f36c77de6f (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - はぴともさん» お返事遅れました。そして更新も遅れましてです（汗）一波乱の臭いプンプンでご披露させて頂きます！ (2016年9月16日 21時) (レス) id: f36c77de6f (このIDを非表示/違反報告)
やみぃ〜(プロフ) - ありがとうございます。意外と壮大な話で申し訳ないです。でも応援しています。 (2016年9月7日 23時) (レス) id: 571eda6b98 (このIDを非表示/違反報告)
はぴとも(プロフ) - むつきさん更新ありがとぉ＼(^o^)／なにやらまた一波乱ありそうですね。スッゴい楽しみです。 (2016年9月7日 22時) (レス) id: d2f048c3cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むつき
| 作成日時：2016年4月20日 21時
