番外編39話 ページ30
『迷子』
まさかの事態に翔の涙が引っ込んだ。
そしてまさかの第二弾、雅紀が後を追って来た。
翔は夢中で走って来たのでどこをどう曲がって来たのかまったくわからない。
雅紀も翔の背中だけを見ていたので道は覚えていない。
二人して迷子。
「……なんとか帰ろう」
不安な気持ち。
腕を伸ばすと雅紀が手を繋いでくれた。
温かみに少しだけ安心する。
「とりあえずまっすぐ戻ろう」
赤い空が少しずつ暗くなっていく。
「……ここ通ったかな？」
まったく見覚えがない風景。
「こっちから来たのかな？」
見知らぬ塀と家。
小さな公園に辿り着いた。
自分たちが遊んでいる公園とは違う。
「ちょっと休もう」
そばにあったベンチに二人並んで座る。
電燈に灯りが点く。
お腹が空いた。
先程とは違う涙が溢れてくる。
キュッと雅紀が手を強く握った。
自分が泣いては駄目だと心を奮い立たせる。
「だ、大丈夫だよ雅紀……」
雅紀の目線は翔に無い。
視線を辿るとブランコに続く。
揺れるブランコ。
誰かが乗っている。
ピタリとブランコが止った。
鎖の音を立てて立ち上がる人。
大人。
男性。
雅紀が苦手なﾓﾉ。
こちらに近づいてくる。
翔は立ち上がると雅紀を背中に隠した。
「君らこんな時間にまだ遊んでいるのか？」
「……違います。帰る途中です」
「そう」
「それじゃ」
「ちょっと待って」
学校で知らない大人に話しかけられたら警戒をしなさいと教えられていた。
目の前の青年はまさに警戒する人物。
「……俺、悪い人じゃないぞ」
信じる訳もなく。
「雅紀、行こう」
早く離れようとすると青年は慌てて自分は怪しいものではないと大きな手振りで説明する。
「ホントに怪しい者じゃないんだ。俺を……助けて欲しい！」
何を言っているのか？
「俺、迷子なんだ」
大人なのに迷子？
「ここに行きたかったんだ」
と上着ポケットから出した一枚の紙。
「あれここ……」
翔たちの住む施設の名前が書かれていた。
ただ住所の部分が茶色く滲んでいる。
「さっきコーヒーをこぼしたんだよ。読めなくなってしまってなんとかうろ覚えの感じで来てみたんだ。でもたどり着けなくて」
この公園で途方に暮れていたらしい。
「ここ知っているかい？」
「……知ってますけど……ぼくらここに住んでます」
「マジか。そりゃラッキー」
「ただ……」
「ん？」
「ぼくらも迷子なの」
「んん？」
迷子が三人に増えたとさ。
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ゆきんこ。(プロフ) - ずっとずっと、この作品を、むつきさんを探していました。前に1度むつきさんのお話を読んだ時にお気に入り設定をしたのですが、そのアカウントがログインできなくなってしまい(記憶力のせい)新しいアカウントを作ってから探し続けてたんです！見つけられてよかった。 (2016年9月16日 23時) (
レス) id: cf8d713ce4 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - やみぃ〜さん» コメントありがとうございます。予定より壮大になっております！頑張りますので見守っていてくださいね！ (2016年9月16日 21時) (レス) id: f36c77de6f (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - はぴともさん» お返事遅れました。そして更新も遅れましてです（汗）一波乱の臭いプンプンでご披露させて頂きます！ (2016年9月16日 21時) (レス) id: f36c77de6f (このIDを非表示/違反報告)
やみぃ〜(プロフ) - ありがとうございます。意外と壮大な話で申し訳ないです。でも応援しています。 (2016年9月7日 23時) (レス) id: 571eda6b98 (このIDを非表示/違反報告)
はぴとも(プロフ) - むつきさん更新ありがとぉ＼(^o^)／なにやらまた一波乱ありそうですね。スッゴい楽しみです。 (2016年9月7日 22時) (レス) id: d2f048c3cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むつき
| 作成日時：2016年4月20日 21時
