番外編24話 ページ15
ケンカは智たちにまったく非なかった。
事実を知った相手の親たちの威勢は消えている。
分が悪いようで帰り支度を始めた。
「お待ちください」
ソファーから立ち上がった親たちを呼び止めたのは先ほどまで温厚な態度を見せていた理事長の植草。
「何か言う事はないのでしょうか？」
厳しい目線を向ける。
「……子供のケンカですし……大人が大騒ぎを……」
「私もそうは思いますが、大騒ぎして押しかけてきたのはそちらの方では？」
少しの沈黙。
顔を合せる親たち。
「……お騒ぎして失礼しました」
求めいた言葉ではない。
あれだけ責めたてて謝罪の言葉一つもないのか。
植草の堪忍袋の緒が切れた。
「あなた方のお子さんは彼らに酷い言葉を向けた。大人の私たちでも受け入れない言葉だ。ですが子供のケンカです。彼ら同志が話し合い、仲直りをするのが一番です。……私が憤りを感じているのはあなた方お母さんですよ」
子供を擁護(ようご)するために智たちへ向けた言葉の刃物。
それは智たちだけではなくこの施設で暮らす子供たちも傷つけるものであった。
「確かに彼らは親御さんと暮らせずにここで生活しています。でもそれは彼らのせいではない」
それぞれの事情。
加勢するように百合も語り出す。
「親がいないから暴力的な子供になると言う事はないんですよ。彼らは寂しさを抱えているから優しさを知っています」
「まぁ親がいても平気で人を傷つける子供もいるみたいだけど」
追い打ちをかけるのは井ノ原。
植草は椅子から立ち上がると智たちの隣に立つ。
「この子たちに偏見の目を向けるのはやめて頂きたい。あなた方のお子さんと変わりない子供ですから」
「理事長さん……失礼なふるまいを許してください。家に帰り子供に言い聞かせます」
「子供が偏見な目で見るのは親がそんな目で見ているからだろうな。子供に言い聞かすんじゃなくてまず自分がじゃないの？」
トドメをさす井ノ原の言葉は効いたようで、逃げるように応接室から出ていく親たち。
「本当に申し訳ありませんでした」
とやっと謝罪を言い残して。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 609人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきんこ。(プロフ) - ずっとずっと、この作品を、むつきさんを探していました。前に1度むつきさんのお話を読んだ時にお気に入り設定をしたのですが、そのアカウントがログインできなくなってしまい(記憶力のせい)新しいアカウントを作ってから探し続けてたんです！見つけられてよかった。 (2016年9月16日 23時) (
レス) id: cf8d713ce4 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - やみぃ〜さん» コメントありがとうございます。予定より壮大になっております！頑張りますので見守っていてくださいね！ (2016年9月16日 21時) (レス) id: f36c77de6f (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - はぴともさん» お返事遅れました。そして更新も遅れましてです（汗）一波乱の臭いプンプンでご披露させて頂きます！ (2016年9月16日 21時) (レス) id: f36c77de6f (このIDを非表示/違反報告)
やみぃ〜(プロフ) - ありがとうございます。意外と壮大な話で申し訳ないです。でも応援しています。 (2016年9月7日 23時) (レス) id: 571eda6b98 (このIDを非表示/違反報告)
はぴとも(プロフ) - むつきさん更新ありがとぉ＼(^o^)／なにやらまた一波乱ありそうですね。スッゴい楽しみです。 (2016年9月7日 22時) (レス) id: d2f048c3cf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：むつき
| 作成日時：2016年4月20日 21時
