番外編11話 ページ2
〜過去話し〜
雅紀が児童施設で生活するようになって三ヶ月の月日が経った。
相変わらず話さず自己主張はない大人しい子供。
引っ付くように智たちのそばにいるものの大人し過ぎて存在をしばしば忘れてしまうほど。
「あら？お膳が一つ残っているわ。まだ食べていない子がいる？」
昼食の片づけを始めた職員はカウンターに一つ残されたトレーに気が付く。
「スプーンとフォークが付いているってことは雅紀君ね」
ちょうど食堂にやってきた智に尋ねる。
お昼ご飯は一緒に食べなかったのかと。
「朝からシスターと外に行ったよ？病院へ行くって」
「あら、まだ戻って来ていないのね？」
「うん」
宿直医で何度か雅紀と対面している東に呼ばれ午前中に百合と病院へ出向いていた。
施設で生活するための健康診断をするために。
ずっと体調不良などが続いていて入所から三ヶ月たった今日出かけたのだ。
「ただいま戻りました」
「……」
「噂をすれば帰って来たわね」
お迎えと走っていく智。
玄関に百合と手をつないだ雅紀の姿があった。
「おかえりシスター、まさちゃん」
俯いていた雅紀が顔を上げる。
「まさちゃんの昼ごはんがあるぞ」
「あら良かった。遅くなってしまったからもうないと思っていたわ」
智が手を差し出す。
「うがいと手洗いしに行こ」
じぃっと手を見つめる雅紀。
「ほらいってらっしゃい」
百合は背中を押してやる。
一歩前を出ると智が雅紀の手を取ってくれた。
「行こ」
可愛い二人は洗面所へ。
うがい、手洗いを済ませると食堂へやって来た。
「今日は中華丼とプリンだぞ」
テーブルに座った雅紀はじっとトレーの上を見つめる。
相変わらず食の細い子供。
スプーンを持たされる。
「おっ牛乳がない。取ってくる」
厨房の中へ走っていく智。
廊下が騒がしい。
鬼ごっこをしているのだろう。
子供たちが食堂へ入ってきた。
遅い昼食を取る雅紀を見ると一瞬立ち止まった。
が、いじわるな笑みを浮かべてテーブルに近づいてきた。
「お前これいらないだろ？」
トレーの上のプリンを取られてしまう。
子供の好きな甘いデザート。
雅紀も好きな食べ物。
話をせず静かな雅紀はたまにこうした意地悪に合う。
「食べちゃおうぜ」
横からプリンは再び奪われる。
「あっ！」
プリンはトレーに戻されていた。
「食べようと思ったのに！」
「お前んじゃないだろ？」
オーバーオールを着た子供が仁王立ちでプリンを食べようとした子供を睨んでいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 609人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきんこ。(プロフ) - ずっとずっと、この作品を、むつきさんを探していました。前に1度むつきさんのお話を読んだ時にお気に入り設定をしたのですが、そのアカウントがログインできなくなってしまい(記憶力のせい)新しいアカウントを作ってから探し続けてたんです！見つけられてよかった。 (2016年9月16日 23時) (
レス) id: cf8d713ce4 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - やみぃ〜さん» コメントありがとうございます。予定より壮大になっております！頑張りますので見守っていてくださいね！ (2016年9月16日 21時) (レス) id: f36c77de6f (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - はぴともさん» お返事遅れました。そして更新も遅れましてです（汗）一波乱の臭いプンプンでご披露させて頂きます！ (2016年9月16日 21時) (レス) id: f36c77de6f (このIDを非表示/違反報告)
やみぃ〜(プロフ) - ありがとうございます。意外と壮大な話で申し訳ないです。でも応援しています。 (2016年9月7日 23時) (レス) id: 571eda6b98 (このIDを非表示/違反報告)
はぴとも(プロフ) - むつきさん更新ありがとぉ＼(^o^)／なにやらまた一波乱ありそうですね。スッゴい楽しみです。 (2016年9月7日 22時) (レス) id: d2f048c3cf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：むつき
| 作成日時：2016年4月20日 21時
