＊205 ページ20
＊
「で、なに。お願いって。」
暑いからちょっと休ませてよ
という定番から始まり
暑くて喉乾いちゃったー
が続き
ちょっとトイレ貸してくれない？
までが終わったころには
すでにうちに来て1時間近くが経っていた。
すべてただの言い訳だとはわかってるけど
その理由が理由なだけに無下にもできず
いい加減イライラが募ってくる。
いつもなら当たり前のジャージ姿も
なんとなく見せたくなくて制服のままで
引き切らない汗がまたそれを助長する。
手持無沙汰に始めたスマホのゲームの音が
控え目ながら小さく響いてくれるおかげで
かろうじてこの異様な空間を繋いでくれていた。
そこであの提案だ。
お願いとやらに嫌な予感しかなかったけど
それで本当に中崎が帰ってくれるなら
とっとときいてしまおうと思ったのに。
「…キス。」
「………え、？」
「だーかーら。キス！して？…ね？」
「は？なん…」
「なんでとか言わないよね？
理由なんていらないよね？
だって私たち付き合ってるんだもん。」
畳みかけてくるその言葉よりも
挑むように向けられる視線の方が怖い。
「…や、まぁ、そう、だけど。
でもほら、俺たちその、そういう…」
「ねぇニノくん。
私はね、ずっとニノくんが好きなの。
で、ニノくんも私を好きなんでしょ？
だから付き合ってるんでしょ？」
「……。」
好きだ、と言ったことはなかったけど
面と向かって否定する言葉も吐けず
ただ沈黙を返すことが精いっぱい。
「よかった。一緒なんだよね？」
ふふっと笑って詰めてくる距離。
めげずに何度も告白してくる中崎を
投げやりにも近い気持ちとは言え
それでも受け入れたのは紛れもなく俺で。
正直俺だってちゃんと男だし
そんな対象と思えないわけじゃない。
けれど。
具体的に想像していたかと言うと…
出来なかったわけじゃない。
しなかったんだ。
したくなかったんだ。
こうして具体的に追い詰められ
とっさに脳裏へ思い浮かんだ顔。
それがAだってことが
苦しいぐらい俺を追い詰める。
＊
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 125人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
櫻宮 - うわぁ…嬉しい（ ´∀｀）ありがとうございます！千春絶対何か隠してますよね？ (2020年8月31日 19時) (
レス) id: 59853f2783 (このIDを非表示/違反報告)
でこぼこ(プロフ) - 櫻宮さん» ただ今帰りました(*´∀｀*)いつも楽しみにしてくださってありがとうございます！それを喜ぶのと同時に、櫻宮さんの予想トークを私も楽しみにしてます！笑 (2020年8月29日 21時) (レス) id: deca25d402 (このIDを非表示/違反報告)
櫻宮 - お帰りなさい！！でこぼこさんのお話の続きが気になって更新できないと言っていたのにも関わらずずーっと覗いてまだかなぁまだかなぁと楽しみにしておりました！千春も何かを隠しているとみた！続きが気になって仕方がないです(^^) (2020年8月27日 13時) (レス) id: 59853f2783 (このIDを非表示/違反報告)
でこぼこ(プロフ) - 橘花さん» お久しぶりです！いつもありがとうございます(*´`)優しい読者さんばかりで本当に有難い(｡-人-｡)世界中どこもかしこも大変な時代ですから、橘花さんもお身体気をつけてくださいね！ (2020年8月22日 14時) (レス) id: deca25d402 (このIDを非表示/違反報告)
でこぼこ(プロフ) - 櫻宮さん» いつもたくさんのコメントありがとうございます(*´`)少々、体力回復に時間がかかってしまいました('-';)歳って怖いですー（笑）確かにそー言われると、まるで遠距離みたいですねぇ！ (2020年8月22日 14時) (レス) id: deca25d402 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：でこぼこ | 作成日時：2020年3月29日 10時
