【手のひらに魔法を乗せて - S.S 】3 ページ47
＊
あったかいぬくもりが
ふわふわと俺を包む。
何だこれ。
やべー。気持ちーーー。
次にやってくるのは
懐かしい実家の匂い。
や、ちげぇな。
これコンソメスープだわ。
俺腹へってんだなーと思いながら
瞼を持ち上げると眩しい光が目に刺さって
体に巻きつく毛布で頭ごと隠した。
…あれ？
いつの間に寝たんだっけ？
辿る記憶は途中で途切れ。
その前の失態が浮かび上がる。
あー。やっちまった。
途端に覚醒する耳。
カシャンと響く食器音。
慌てて体を起こした先に見えたのは。
「あ、おはよう。よく眠れた？
翔、最近疲れてるのに。
そんなトコで寝たらダメだよ？」
いつもと変わらないその姿。
いつもと変わらないその口調。
ベッドで寝ないと疲れ取れないんだから。
そう言いながら着々と準備されていく食卓に
痛々しいほどのまばゆい朝日がつき刺さる。
なんでそんな普通なんだよ。
そう思うけど。
「ほら、早くごはんにしよ？
しっかり食べて体力つけないと。
疲れてるとイライラしちゃうんだから。」
急に優しくされると
泣きたくなるのは何でだろうな。
「…ん。……悪りぃ。」
決して聞こえるわけがない呟きに
ふふっと笑って食卓に座るから
俺も黙ってその向かいに腰かける。
見透かされてんじゃなくて
見守られてんだってこと。
頭ん中では分かってんだよ。
大人になれない面倒な俺を
まるごと包みこむ広い心と
果てしないその優しさに。
ごめんなさいとありがとうを
両手のひらにたくさん乗せて。
「いただきます。」
パンッと大きな音を響かせた。
fin.
＊
おまけ＊【あいうえおでアイラブユー】→←【手のひらに魔法を乗せて - S.S 】2
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作者名：でこぼこ | 作成日時：2017年3月5日 1時
