short×short - ars (ページ43)

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【LAST STAND － O.S 】3 ページ43

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ただいまと屈託なく笑うあいつに
オレはおかえりっつったんだっけな。

「まさか引っ越すの…。
　私も捨ててく？ワケないよね？」

あの時は確か…そう。
半年ぶりぐらいにフラッとやってきたんだ。

散々待ってたのはオレなのに
まるで捨てられる犬みてぇに
黒目がちな目を潤ませんだよ。

都合よく濡れんだから
やってられねぇって。

なのになんでオレが
悪者みてぇになるんだよ。

ずりぃじゃねーか。

両手で作った小さなお椀を差し出されて
新しい家の鍵を放り込んだのはオレだけど。

思い返してみたって
出てくるのはこんなエピソードばっかで。

オレだって自由が好きだ。

だからAの自由な振る舞いも
分かる分かる、つって。

理解し受け入れてたのは
いつ頃までだったか。

羨望から嫉妬へ
嫉妬から落胆へ
落胆から失望へ

オレってこんな情けない男だったけか。

1番になりてぇなんて思ってねぇ。
アイツはいつだって自由だ。

そこまで分かってんのに
なんでまた手が出ちまうんだろな。

布団に潜り込んだAは
バカみたいな穏やかな寝息で夢の中にいて。

んだから俺も
安心して背中向けたっつぅのに。

身体にクる甘美な刺激で目が覚めた。

白みがかった朝日が目蓋に刺さるから
目も開けらんないまま微睡みの中
手さぐりで触れた熱を貪った。

そうなるともはや
習慣みてぇなもんで。

戸惑いの気持ちは鳴りを潜め
ぶつける身体だけに意識を寄せた。

ぐったり疲れきったような
腹の底まで満足したような。

矛盾が入り組み合う身体で
肺いっぱいに空気を取り込んでいると
図ったように鳴り響いたアラーム音。

ズブズブとはまるアリ地獄みてぇに
足掻いてももがいても
どこにも出られねぇのはなんでだ。

モヤモヤする頭とは違い
妙にすっきりした自分の身体に
また少しだけ腹がたった。

＊