【LAST STAND − O.S 】2 ページ42
＊
Aと出会ったのは
10数年だか前の話。
正確には覚えてねぇけど。
まだオレは
先の見えない生活に疑問しか抱けず
自由の身を諦めきれない日々を
ただ淡々と過ごしていた。
いつでも捨てれると思ったものは
一向に捨てられる気配もなく
息を潜めて間が過ぎるのを待ってて。
そんな頃に出会ったのがAだった。
常識や価値観や雰囲気をもろともせず
自由奔放に飛び回るAに
オレはあっという間に堕ちた。
好きとか嫌いとか
そんなのは分かんねぇけど。
ただ
見てるとワクワクしたんだ。
次は何やらかすんだ？つって。
この感情に名前なんていらねぇって
そう思ってた。
その時は。
名前、付けときゃよかったって
ここ何年も後悔してる。
それがありゃオレの存在価値も
もちっとあったかもしんねぇのに。
いつもより熱いシャワーを浴びたって
冷えたビールで愚痴を飲み込んだって
ため息ついでにツマミを食ったって。
変わんねぇ。なんも。
いつまでオレは囚われてんだ。
必要とされなくなる日まで
この世界に身を置こうと
決意したあの日。
不安定なオレの気持ちごと
まるっと包んでくれる仲間たちに
ついて行こうと思えたあの日。
だからこそ
引っ越そうと思い立ったあの日。
マネージャーに家さがしを頼んで
ピックアップされた物件の中から
適当な気持ちでひとつ選んだ。
新しい家の開栓やなんやも済んで
いよいよ引っ越しも明後日に控えた夜。
ほとんどの荷物が
いくつもの段ボールに詰められて
残ったのは大型家具だけ。
なのに仕事から帰ってきたら
積み上がる箱の隙間にAがいた。
＊
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作者名：でこぼこ | 作成日時：2017年3月5日 1時
