【ここに願いを − O.S 】2 ページ33
＊
半同棲中のようなAとの付き合いは
なんだかんだでもう2年ぐらいになる。
最初は恐る恐るといった様子で
遠巻きに覗くだけだったアトリエ部屋も
今じゃ無粋なぐらい自由に振る舞う。
とは言えさして興味があるわけでもないらしく
へぇ〜と突っつく程度のもんで
ほっといてくれるから気にもならない。
唯一興味を示すのが粘土で
俺がこねてると横で触り始めたりする。
だからリビングに広げたまんまでも怒られない。
介護施設で働くAは今日夜勤で
ギリギリ家で会うかと思ったけど
たぶん引継ぎかなんかで遅れてんだろう。
結局顔を合わすことなく俺は家を出た。
22時近くになって家に帰ると
案の定真っ暗で誰もいないものの
ほんのりとどこか空気が冷えていて
少し前までエアコンが効いてたことが分かる。
あいつが夜勤の週はほとんど会えねぇから
まぁいつもこんなもんだ。
用意してくれたらしい刺身や炒め物を片手に
ローテーブルへ移動しようとして
昼間のやりっぱなしを思い出した。
と、作りかけだった塊に目がいって
…ん？なんだ、ありゃ。
俺のいじってたはずの塊は
見事きれいな長方形に型取られ
一反木綿ぐらいの薄さでペタンコ。
おまけに上の方に小さな穴が開き
極めつけは張られた付箋の
“Ｄｏｎ‘ｔ Ｔｏｕｃｈ Ｍｅ！”
そっと撫でたら
まだそれなり湿り気はあるが
今から形を変えるほどの柔らかさはない。
コレで完成ってことか？
あ、触っちった。
謎の作品に頭をひねりながらも
ダイニングテーブルへと移動し
渡されたワクワクの企画書に目を通しつつ
タコをぽいっと口へ放り込んだ。
Aの夜勤は一週間ほど続く。
テーブルには不思議な部品が増えていき
今日はまとめて陰干ししたようで
薄っぺらの穴あき長方形が
ばらばらとシートに転がってた。
もう一枚のシートには
小さな貝殻のようなものやら
金網みたいな…なんだ？
ダメだ。全然分かんねぇぞ。
そろそろ教えてくんねぇかな？
仕事中と分かりつつ
− ヒントくれ！
部品の写真をつけて送ると
数分後に返ってきたのがこれだ。
− タコ作っといてー！
・・・謎が増えた。
＊
【ここに願いを − O.S 】3→←【ここに願いを − O.S 】1
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 55人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：でこぼこ | 作成日時：2017年3月5日 1時
