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「えっ、Aも孤児院出身やったんや」
隣で素っ頓狂な声を上げたのはシャオロンだ。近接部隊にてお互いに隊長として自分の指揮する隊を持って競い合う、良きライバルの彼が「も」と発した文脈に違和感を覚えた。
「シャオロンもなの？」
「うん、そやで！俺戦争孤児でなぁ」
普通に考えて孤児の軍人政策があるなら、軍事施設にて出会う仲間の殆どが孤児だったと言えるが、まさか一番身近な彼もだったなんて思いもしなかった。ひょんなことから始まった孤児院トーク。冬の間の雑巾がけがどれだけ寒いかとか、秋になって配られる白パンの美味しさとか、思い出話は深夜にまで続いた。
そろそろ寝なきゃ明日の訓練が辛いぞ、と何方かが言って話を切り上げようとした時だった。シャオロンは何かを思い出して不意に声のトーンを上げた。
「あっ、そういや俺とシッマ、同じ孤児院なんやで」
「えっ、まってシッマも同士なの？」
そや、と彼は得意そうに言う。
「ほら、孤児院で1番仲ええやつとかおるやん、俺の場合それがシッマやってん。軍事学校卒業してからまた再会してなあ」
「えぇ、2人とも幼なじみだったの。通りで仲良いんだね」
“孤児院で1番仲良い人”。ふと脳裏を掠った記憶があった。彼は元気だろうか。私の後ろを着いて歩き回っていた背丈の小さい藤色の瞳は何をしているのだろうか。もう十年以上前の記憶を掘り起こせば、案外色々なことを覚えているとわかる。そもそも、生きているのだろうか。
「まぁ、それで軍事学校のシッマの…って聞いとる？」
「…ぇ、ああ、うん。」
なんも聞いてなかったやろ、と笑ったシャオロンと廊下で別れ、その日はすぐに眠りについた。
夢に出たのは、あの廃れた孤児院だった。
騒ぐ子供たちの中で独り大人しく口を紡ぎ、孤児院内では絶対的権力を誇るマザーを嫌う私について歩いてきた子供はこう言った。
『嘘つき、突然いなくなって』
ｷｭｲﾝ､と甲高い音が響いて情景が崩れる。
孤児院内の天井が、床が、溶けて、解けて。
黒に染り切ったそれが次に映すのは、絶望の深淵。
まるで悪夢のようだった。それが悪夢だと断定できないのは、目の前の子供があまりにもリアルだったから。夢と言うにはそれは、現実的すぎたのだった。
手を伸ばしてその小さな手を掴もうとすれば、それは空を斬る。まるで近づいてくるなとでも言いたげに私を蔑む藤色の瞳が偽りを含んでゆっくりと微笑む。
そして次の瞬間、その子でさえも黒に染って───
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鯉口(プロフ) - 赤羽 紫音さん» コメントありがとうございます！ (2020年4月4日 3時) (
レス) id: ad6d0057cd (このIDを非表示/違反報告)
赤羽 紫音 - 凄い！ (2020年4月4日 2時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
鯉口(プロフ) - ノアさん» 主催者の鯉口です。コメントありがとうございます(*^^*)まだまだ続きますので更新をお待ちください！ (2020年2月29日 1時) (レス) id: ad6d0057cd (このIDを非表示/違反報告)
ノア - めっちゃ好きです！ 文才分けて欲しいぃ((( 毎日、楽しみにさせてもらってます！ 更新頑張って下さい！ (2020年2月25日 22時) (レス) id: 47bc0266fa (このIDを非表示/違反報告)
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