9 ページ33
✾
「しんぺいさん――」
チーノがしんぺい神に何かを言おうとしたときだった。
軍医の側で横になっていた患者が、うめき声を上げてのそり、と起き上がったのだ。
驚いたチーノを見て、しんぺい神がそちらを向けば、先ほど完治した患者は背伸びをしながら上体を左右に動かしていた。
「ああ、もう起きたんだ。おはよう」
しんぺい神が患者に向けて挨拶を送ると、彼女は軍医に気づいて明るく返事をした。
「おはようございます！ 今って朝なんですか？」
「いや、もう夜」
「あ、じゃあこんばんわですね！ 今日は寝付けるかな？」
彼女は藍色の短い髪を揺らしながら、へらりと笑った。
先ほどまで仮死になっていた怪我人とは思えないほどの明るさである。
紫色を帯びた丸い瞳は、帳が降りた時のような、夜の輝きを放っていた。
「明日、ちゃんとゾムのところに顔出しなさいね」
「はーい」
「君はゾムさんの部隊所属なん？」
チーノは元気いっぱいの彼女に聞いた。
てっきりコネシマ率いる陸軍だと思っていたのに。
「はい！ 一応ゾム隊長の部下やってます。
あ、あたしの名前はラトです！ 初めまして！」
「おん、初めまして」
(さすが立ち位置は陸軍の特攻隊……。元気がいい……)
「チーノさんですよね？ この前、弓で腕を怪我してた！」
「覚え方最悪やな」
「私新人なので、まだちゃんと上司の名前と顔一致しないんですよ」
にこにこ笑顔で話すラトは、ゾムの特攻隊の新人だった。
今回の戦争が初陣だったらしく、早々に砕かれて帰還してきた。
本人は、最初はこんなもんだ、と全くと言っていいほど落ち込んではいなかった。
✾
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 150人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「wrwrd」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鯉口(プロフ) - あきらさん» コメントありがとうございます！最初の注意事項の項目を読んで察していただけると幸いです (2022年7月20日 0時) (
レス) @page1 id: ad6d0057cd (このIDを非表示/違反報告)
あきら - 宝石の国、、、、？あっいつも見てます頑張ってください (2022年7月19日 18時) (レス) id: 59a8197af5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
