斜陽【中原中也】

第30話 ページ30

貴女side





貴女｢…………｣




勝手に家を出ていき勝手にマフィアになり


勝手にマフィアを抜け勝手に私をマフィアにした…





久々の再会がこうなってしまうなんて…





『A。』




貴女｢…………｣





あの優しい目と声は何も変わっていないのに



どこか遠い存在のように思えてしまう





きっと


私が平穏な日々を送る中で



色んなものを見てきたんだろう…




『死んだ友』






失ったのは私だけじゃないのに




私は自分の怒りをぶつけただけだった






……………それでも…





それでも、理不尽な両親の死は悔やみきれない…





？｢遅くなったな、悪い｣



貴女｢……………中也さん…｣



中原｢帰ろうぜ｣



貴女｢………はい｣





何を話してたんだろう…





中原｢…しかし、初めて撃つ相手が兄とはなァ｣


貴女｢…やめてください｣


中原｢すまん｣


貴女｢………｣


中原｢………黙ってて悪かったな。｣


貴女｢何がです｣


中原｢手前を拾ったのは太宰の頼みだと｣


貴女｢………謝らないでください

むしろ…ご迷惑をおかけして｣


中原｢俺は一度もそう思った事ねェが｣


貴女｢……｣





気を使ってくれているのだろうか





貴女｢…中也さん｣


中原｢なんだ。｣


貴女｢………私…

兄さんが探偵社で楽しそうにしているのをみて…｣



中原｢………｣



貴女｢あの夜を忘れることはできないんです…｣


中原｢……あァ。｣



貴女｢…私は…どうしたらいいですか｣



中原｢…………｣




黙り込む中也さんにも分からないのだろう


そりゃそうだ



彼は兄に頼まれて私を拾ったにすぎないから





中原｢……これからどうするかなんてのは俺には分からねェが…


俺には手前が必要なのは確かだ。｣



貴女｢……斜陽ですね｣



中原｢…………それだけじゃねェよ｣



貴女｢中也さん？｣





最後の一言は彼に口元でささやかれ私の耳には届かなかった




貴女｢……無理に兄の頼みを聞く必要はありません…


私はもう大丈夫です…一人でもマフィアで…｣




中原｢だから誰があのぽんつくの頼みなんか聞くんだよ


俺ァ自分の意思で手前を＿＿＿｣



貴女｢……中也さ、ん…？｣



中原｢い、今のは忘れろ｣





ぷいとそっぽを向いてしまった彼はあの続きをなんと言おうとしたのだろうか





中原｢ほら。さっさと帰ろうぜ。｣



貴女｢…………はい｣

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