キールに沈んで (ページ8)

今日:20 hit、昨日:3 hit、合計:12,864 hit

8 ページ8

収録も楽しく終え
収録前に渡せなかったみんなにクッキーを配っていたら
楽屋に戻るのが遅くなってしまった

北山さんにも渡したかったのにもう居ないし
北山さんに渡したいからガトーショコラも甘さ控えめにしたのになぁ

…まあいっか！

なんて呑気に楽屋へ戻ると
いつも私を出迎えてくれるマネージャーが居ない

メッセージの既読もつかないので
車があるかどうか確認すればいいかと
気にせず着替えて楽屋を出る

北山さんには特別にはガトーも持ってきてたけど
自分で食べちゃおうかなーなんて
思ってみたりもした

駐車場に向かう途中
正面に早乙女さんが立っているのが見える

やば、忘れてた…
なんて言えないけど

『早乙女さん』

あたかも｢覚えてましたよー｣と言う雰囲気を全力で出しながら声をかける

『この予用事あるんで、話すのここで大丈夫ですか？』

興味のない、しかも手が早い、良い噂のない男と
2人きりになるのは流石に避けたい

また撮られたりしたら
あの人の名前にだって傷が付きかねない

「うーん、仕方ないなあ」

早乙女さんはそう言うや否や
近くの会議室か何かに私を引きずり込む

『は！？』

思わず睨むと早乙女さんはそんな私を見て微笑む

いや、マジでヤバいって、ありえないでしょ

早乙女さんが入口側に立っているせいで逃げられない

どうしようかと考えている間にも
ジリジリと近付いてくる

「そんなに怖い顔しないで…。
僕のこと好きなんでしょ？
大丈夫、すぐ終わるから」

『待ってください！
私、早乙女さんの事そういう風に思った事ないですから』

「恥ずかしがらないで良いよ」

話し通じない系ですか！？
すぐ終わるって何！？

いっその事、横を抜けて逃げるしかない。
そう思って思い切り走り出したが
腕をつかまれて壁に叩きつけられる