キールに沈んで (ページ7)

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たくさんの人にクッキー配って、
女性からはチョコやお菓子をもらって
ウキウキで終えたバレンタイン当日

今日配り終えたら、
ようやく私のバレンタインが終わる

「わぁー、橘ちゃんありがとー！
私の既製品ですまないね」

『いつも可愛くしてもらってるんで』

「もー、本当上手なんだから」

局のメイクさんにも渡して
キャッキャとしていると
早乙女さんがメイクルームに来る

「橘さんおはよ」

『あ、おはようございます。』

「あら、早乙女さんもうメイク終わってますよね？どこか直します？」

さっき早乙女さんを担当したらしいメイクさん
が慌てて駆け寄る

「あ、大丈夫ですよ。橘さんに会いに来たんで」

『私？あ、クッキーですか？
今あるので渡しときますねー』

スタッフさんや共演者さんに会えるかもと思って
何個か持ってきていたクッキー

ちょうど1つだけ残っていたので
ハイと渡すと
早乙女さんは私に顔を近付けてニコッと笑う

『収録終わったら少し会いたいな。いい？』

は？と内心思ったが、ここで揉めても良くないので

『マネージャーも居るので、少～しだけなら…
アハハ…』

と苦笑いしておく

それとほば同時に入ってきたのは北山さん
ちらりと私たちを見ると、
「オスガイシマース」とイスに座って目を眺ってしまった

「じゃあ、そういう事だから」

『え！？』

やばい、話は聞いてなかった
え、何？と思った時にはもう遅く
早乙女さんは扉の向こう

何だったんだ？と思いつつも
椅子に座りなおしてメイクの続きをやってもらう

鏡に映るメイクさんの顔がなんだか険しい

『なんですが、その顔』

「んー、早乙女さんとどういう関係？」

『どうもこうもないですね。
最近ようやく話すようになったくらい…？』

「付き合ってるとかって…」

『無いです。あの人にそんな興味もないです』

北山さんを担当してるメイクさんも話に入ってきて本当に心配されてるみたい

「あの人、手早いって噂だから気を付けてね」

「あ、でもほら橘ちゃんにはさー」

「噂の殿方がね～」

『え？あ、いや、』

「ぶえっくしゅ」

「えー、やだ北山さん寝ながらくしゃみしないでよー」

あたふたするメイクさんと構わずスヤスやと眠る北山さんを見て思わず笑みが溢れる

片口角が微かに上がっている北山さん
話題逸らしてくれたんだな…