キールに沈んで (ページ45)

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『うちマンションさ、大倉くんが住んでるって知ってた？』

「へ？大倉ってあの大倉？」

『そうそう。仲良しさんなんでしょ？
だからたまにうちに来てもさ、
大倉くんのお家に居ましたって言えるよ』

「ははっ怖い女だねー」

『んで、沢山のお酒とおつまみ持ってくるの。
そうしたらみんなで飲んでましたって言えるでしょ？』

「なに、今までそうしてきた訳？」

『諒くんの入れ知恵だもーん。
元彼と友達が同じマンションだった時に
そう言えって言われたんだもん』

「うわ、佐伯さん怖ー」

『怖いよねー』

諒くんは良くも悪くも
私の恋愛面に対して非協力的では無かった

とはいえ人んちの鍵を勝手に渡すなんて今まで無かったし
相当宏光のことがお気に入りらしい

『あと50年くらいなら待ってあげるからね』

『宏光はスーパーアイドルになるの。
んで、私も女優のお仕事頑張って、
モデルのお仕事も頑張って、
国民的なタレントさんになるから。
そしたら誰にも文句言われないね？』

「負けてらんねぇなぁ」

ぐーっと回した腕に力を込めて笑うから
私も宏光の腰に腕を回して力を込める

「ギブ！ギブ！」

『あはははっ』