キールに沈んで (ページ43)

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お風呂場の壁を見つめて
なるべく彼を見ないようにして湯船に浸かってると
シャワーの音

「シャンプー使っていい？」

『そこにあるので良ければ』

鼻歌なんか歌っちゃってご機嫌そう

「ほら詰めて」

『え！もう洗ったの？』

「俺入れないだろ、ほら」

『え？え？』

私の後ろに無理やり入り込んで
私を包むように抱き抱える

『私昼間まで避けられてたよね？』

「うーん、それに関してはごめん。でも正面からぶつかって来られたら、応えない訳には行かないだろ」

『何か事情があるんでしょ？だったら無理には聞かない』

「ありがとう。でも結構待たせるかも」

『別にいいよ。他にいい男か現れたらそっち行くだけだし』

「あ？行かせねぇし」

『俺様』

「うるせーなぁ」

お腹に回った腕が少しだけ力が入ったから
好きだなって思ったから

『ねぇ宏光』

「ん？」

『好きだよ』

「ふふ」

『ふふふ』

「A」

『なぁに？』

「好きだよ」

『私も』

素直に伝えると素直に伝え返してくれるから
そのテンポが心地いい

お腹に回った手が少しずつ怪しい動きに変わっていくから
必死に手を掴んで抵抗する

『のぼせちゃうから無理！』