キールに沈んで (ページ5)

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その日の帰り、車内

『ねぇ、バレンタイン前後で
早乙女さんに会う機会ってある？』

「なんで早乙女さん？」

『バレンタイン欲しいって言われた』

「早乙女さんはやめといた方が良いよー…」

『は？』

「あんまり良いウワサ聞かないし」

『へーそうなんだ』

「まさか好きになっちゃったとか！？」

『なんでそうなるのよ。違うから』

「そう？なら良いけどさぁ」

ふーん、あんまり良いウワサ無いんだ
顔良いからモテんだろうなー
ま、私には関係ないケド

げ、枝毛見つけた最悪

興味なさげに毎日アイロンでダメージを受けてる
髪の毛を見つめる

「Aちゃんは2か月前に報道出たばかりなんだから
恋愛系は気を付けてよ」

『はーい』

別にちゃんと振っ切れてるし
あの人とどうかなりたい気持ちは無いけれど
だからと言ってすぐ次！
となれる程強い女じゃない

悩んでいる時に北山さんに貰った豆乳は好きになったけど
あの人とさよならをした日に飲んだ豆乳ラテは
末だに飲めない

○○タワーにだって行ってないし
最近ようやく車窓から見てキレイだなって思えるようになった

ほんとに少しずつ失恋から立ち直ってきたんだ

「ほんとに分かってる～？」

『諒くんさー、誰かいい人知らない？
イケメンで私の事だけ愛してくれる人』

「……知らない」