キールに沈んで (ページ35)

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それからしばらくが経ったけど
彼はもとより
キスマイの他メンバーの方にも会う機会はなく

連絡先を知らない彼からの連絡はもちろん無いし

北山さんも舞台を2ヶ月後に控え
きっと今すごく大変な日々

私は映画の出演が決まったとはいえ
まだ何も進展はなく

本当に何も無い日々が過ぎていった

スタジオについて軽く打ち合わせを済まし
待ち時間を使って
スタジオ内のカフェテリアに向かう

カフェテリアと言っても飲み物の自販機があるだけの簡易的なものだけど

「A～！」

『花梨！』

スタジオの廊下を歩いていると
同じ事務所で仲の良いモデル仲間の花梨が
後ろから抱きついて来た

「ねえ今暇？」

『カフェテリア行くけど』

「私も行く～！」

わざわざ腕をくんで歩く姿は
いい歳した大人とは言えないけど
私は花梨とのこの関係性が好きだった

カフェテリアには誰もいなく私たちの貸切状態

「あ、そういえば映画決まったって言ってたじゃん？」

『うん』

「私も出ることになりました～」

『え！まじ！？やった～～！！！』

「夜の顔合わせ私もいるからよろしくね」

自販機の前で飲み物を選んでいる
花梨から突然のご報告

出てきた飲み物を放り投げる勢いで花梨に抱きつく

「あ、あともう1個報告なんだけど」

『なになに！？』

「彼氏と同棲始めま～す」

『えええ！！金城さんと！？』

「そう！ちょうど今月で今のマンション契約切れるから」

花梨の恋人の金城さんは
とあるグループに所属している人気男性アイドル

『金城さんってアイドルでしょ？いいの？』

「ん～、いいんじゃない？」

『そういうもん？』

「アイドルである以前に1人の人間だし、そもそもどっかの女性グループみたいに恋愛NGじゃないし」

『まあそうだけど～』

金城さんのプロ意識がないなんてこれっぽっちも思ってない
あの人は本当にファンの事を考えている
天性のアイドルだ

だからこそ、
私が北山さんとお付き合い出来ない理由が
だんだんぼやけて行ってしまう気がした