キールに沈んで (ページ11)

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「はい、着いたよ」

『本当何から何までありがとうございました』

マンションの地下駐車場に車を停めた彼

車を降りようとした時
北山さん用に用意したクッキーとガトーショコラの存在を思い出す

「どしたの」

『北山さん用にって取っといたんですけど…』

「え！まじ！？バレンタイン？」

『でも、ぐちゃぐちゃになっちゃって…』

「そんなの気にしねーよ」

北山さんはそう言ってくれるけど
今日あんな事があって助けてもらったのに
こんなボロボロの物を渡すなんて出来ない

『北山さん、明日って朝早くからお仕事ですか？』

「ん？明日は割とゆっくりだけど」

『うちに、綺麗なやつあるんで、お時間大丈夫そうない食べて行きませんか？
空き腹に甘いものが嫌ならなら、何か軽く作りますし！』

自分用に取っておいたクッキーとガトーショコラ
何かあった時のためと思って少し残してあるから
それを食べてもらいたい

「はは、必死かよ」

そう笑う北山さんに、やってしまったと恥ずかしくなる

いつもこうだ
コレ！と思ったら一直線になってしまう

すっかりしょんぼりとしている私の頭を一撫で

「そういう事なら、お言葉に甘えて少しおじゃましようかな」

『本当ですか！？』

「うん」

『やった！
おいしい紅茶をお父さんにもらったの！
あ、コーヒーの方が良かったかしら？」

「橘ちゃんのオススメでいいよ」

『はい！』