キールに沈んで (ページ2)

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『収録押しすぎなのでは…』

ゲストとして呼んで頂いたバラエティの収録
盛り上がりすぎて全部終わったのは22時近く

それでもいつもより早い時間だからサウナに行こう
スタジオからすぐそこのサウナは
評判もいいから1度行ってみたかった

「じゃあ僕は事務所戻るから、帰りはタクシーで帰るんだよ」

『はーい』

適当な場所で下ろしてもらってお目当てのサウナに向かう

町はすっかりバレンタインムード
マネージャーとスタッフさんたちにも何か作ろうかな…
なんて考えながら寒空の下を歩く

『あ、予約していた橘です』

「橘さまでございますね。お部屋番号は306号室でございます。」

『ありがとうございます』

ボブに切り揃えた髪を一つにまとめ
パパっと体を洗い、いざサウナへ

ちょっと温度高い気がするからいつもより短めにしよ～
あー、あつい～

水風呂適温で快適～
気持ち～

やっぱりサウナって最高だわ～
スッキリ爽快って感じ

なんだかんだ小一時間楽しんだので
退出ボタンを押してカウンターへ戻る

『ありがとうございました～』

受付のお姉さんに鍵を返して外に出ようとした時
不意に声をかけられる

「ん、あれ？誰かと思ったら橘ちゃんだ」

『…北山さん！お久しぶりです』

北山さんは私が恋愛で落ち込んでる時
サウナを教えてくれて、私に勇気をくれた人
不毛な恋愛してないで前を向こうって
そう思わせてくれた人

だから、ちょっとだけ信頼してて
ちょっとだけ感謝してる

流れで北山さんのチェックアウトを待って
2人仲良く店を出る

『北山さん最近どうですか？』

「ん～？まあぼちぼちかな
あ、俺車で来てるけど乗ってく？」

『撮られたら嫌なんで遠慮しときます』

「手厳し～」

ニコニコと笑う北山さんはいつもの北山さんだ

以前好きだった人とはずっと曖昧な関係で
週刊誌に撮られてしまったこともあったけど
彼の心にはずっと別の女性がいて
結局上手くいかず

それなのに未だに私とあの人のツーショットを狙ってか
時より記者の車の見かけることがある
あの人の時はそんなの気にしてないくらいだったけれど
さすがに北山さんを巻き込む訳にはいかない

理由を簡単に告げて『では』と彼と別れる

北山さんはどこか不満げだけど
気にせずタクシーに乗り込む

明日は少し忙しい1日になるから今日は早めに寝よう