英くんが今日も愛しい【国見英】

45.気まずい ページ11

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英くんが出て行って、もう3時間が経つ。

とりあえず気持ちを落ち着けようとお風呂に入ったが、
それ以外何もする気が起きず、ソファに横になった。


ダメだ、考え事を放棄すると目に涙が溜まっちゃう。


胸がずきずきと痛む。

強く唇を噛み締めたせいで、
唇が切れてクッションに血が落ちた。


濡れた髪が首元に伝って冷たい。



『ぬ〜〜〜〜〜っ』



クッションに顔を埋めてジタバタしてみるけど、
まあなんの解決策が浮かぶわけでもない。



ぴろん、と孝支からLINEが来て何事かと思ってみれば、

「除毛剤と発毛剤どっちが勝つと思う？」だの
「風呂上りの耳掃除って湿ってるよね」だの
「後輩のジョリジョリが足りない」だの

連続で送ってきたから一時的にブロックして携帯を投げた。



時計はもう深夜2時を指している。



今日はもう、眠れそうにないや。

明日が日曜日で良かった。大学もバイトも入れてない。


投げた携帯を拾ってベッドにぼふん、と寝そべると
携帯が震えて飛び上がった。




『っえ、』




着信の相手は〈英くん〉。

ドキドキして、ズキズキして、震える指で通話ボタンを押す。



『………っはい、』

〈あ、国見の彼女さん？〉

『え？』




英くんじゃない声がして、戸惑った。

男の人。後ろで居酒屋のガヤガヤとした声も聞こえる。



〈こんな時間にすみません、あの、国見潰れちゃって…〉

『はぁ…』

〈AさんがAさんがーってさっきから煩くて〉



ぅぐ、何だろうそれはちょっときゅんとした。

いや、悪口かも知んないけど。
悪口だったらどうしよう、英くんとてベランダに寝かせよう。



〈場所○○ってとこなんですけど…〉




……近っ。

家から10分くらいの距離のとこだ。


何かやめてよ私あの居酒屋お気に入りだったのに。


要するに、英くんが帰れそうにないから、
私の家に置いて行ってもいいか、とのことだった。


正直、今の今で気まずい。



………けど……




『………いいですよ』




これを逃すと、英くんとはもう話せないような気がする。






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