英くんが今日も可愛い【国見英】

19.優しい ページ20

・



『いてっ』



ブースに思いっきり右肘をぶつけた。



「…目、どうしたの」

『フェス行ったら肘打ち食らった』

「馬鹿だ」



ケタケタ笑う英くん。
それは可愛いけど私の右目は可愛くない。


そう、2日前フェスに行ったの。


そしたらめっちゃ人多くてさ、もみくちゃにされて、
禁止されてるのに上から人飛んできて(分かる人は分かる)、

飛んできた男の人の肘が見事に私の右目に当たった。
痛いし腫れるし青タンできるし、もう最悪で。

隠すために眼帯してるけど感覚が慣れてないから、
右側が今全部死角なの。ほんと無理泣きたい。


しかも今日英くんが右側に座ってるもんだから、
横目で拝むことすら出来ない。ほんと無理泣きたい。

授業が終わっていつものように手を振って見送る。



『おつかれさまー、気を付けてねぇ』



…あれ、今日手振ってくんなかった。



まあそんな日もあるか、と諦めて、
残っている作業を片付けようとブースに戻った。



「佐倉先生」

『ん？』



ブースで授業報告を書いていると、肩を叩かれて。
振り向くと帰ったはずの英くんが立っていた。



『どうしたの？忘れ物？』

「…コレ、あげる」

『え、ありがとう？』



コンビニの袋を私に差し出して、
「お大事に」って言って帰って行った。



『…あ』



英くんの不可思議な行動に首を傾げるも、
コンビニの袋の中を見ると、



ブルーベリー味の栄養食品。



あ…目…気にしてくれて、
態々買って戻ってきてくれたんだ。

でもブルーベリーって確かに目に良いって言うけど、
英くんコレね、外傷だからブルーベリーじゃ治んないよ。



『んふ…ふふっ、』



いや、笑っちゃいけないのは分かってるんだけど。

あっあぁぁあ〜〜〜…でも可愛い以外の形容詞がない

愛い…！愛いよ英くん…
今なら先生鼻血で貧血起こせそうだよ…っ




「…さっき国見戻ってきました？
って、何でそんな笑ってんスか」



白布くんが私のブースまで来て、
お腹を抱えて笑いを堪えている私を見て目を細めた。




『見て、英くんがくれた』

「あぁ、目ですか？…いや外傷に何でブルーベリー(笑)」



白布くんもお腹を抱えて笑ってた。



「可愛いとこあるんですね、アイツ」

『いや、英くんは存在が可愛いじゃん。
半年以上前から私はそう言ってる』

「はいはいそうですね」

『うわぁ棒読み』




家宝にするって言ったら、"塵を見る瞳"で見られた。






・

20.行かない→←18.ツンデレ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す