【菅原孝支】これを愛と呼ぶなら。#8

【ぶつかれ】 ページ17

______


音駒をフルセットで打ち破るも、

準々決勝で敗退。


春高バレーは終幕を迎えた。


これで俺たち3年生は引退。


青春が終わったーなんて楽観的なことを

言ってられるのもその日までで、


すぐに受験勉強に切り替わり、

1、2年と顔を合わすこともなくなった。


1月以降は午前授業ばかりのため、

Aと話すこともできず。




菅原「…んー…」



あれよあれよと時間が経って、

いつのまにか無事に受験も終わって、


東京進学が決まった。


何回かメールを送っても、


"受験の邪魔したくない"って

Aから連絡が来ることなんてなかった。



カレンダーを見あげて、

×のついていない日を数えた。




3月1日。




まで、あと3日。




この日の卒業式、卒部式が終われば、


Aの姿を見ることすらかなわなくなるだろう。



Aに連絡を取ろうにも、

今新チームになって、いろいろ忙しいって縁下から聞いていた。


インターハイがあるからって。





どこまでも前を向き続けているバレー部の奴らに、

感心すると同時に、羨ましいとも思う。






俺だけが、まだ進んでない。







何も、解決してないんだ。





震えることのない携帯を手に取る。

時計の針は午後10時を指している。





部活も終わってるし、まだ寝ていないはず。








菅原「…1回だけ…」









______…1回だけなら、いいかな。









痛いほど締め付けられる心臓を抑えて、

Aの名前を押した。









ﾄｩﾙﾙﾙﾙﾙﾙ…









3回、機械音が鳴って、









「おかけになった番号は、現在、電波の届かないところに…」









無機質な声が、響いた。

…2→←…5

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す