負けない勝てない ページ9
「そっか、1回来たもんな、お前」
「何があったのか、何もなかったのか、わたしにはよくわかんないけどさ、きっとマホトはひとりじゃないから」
「なに急に」
「親方さんは大丈夫って話〜」
マホトの髪をワシャワシャとかき回す。
あの時のサグワくんやジンと違って傷んでないふわふわの黒髪。
「お前には敵わない」
マホトは笑う。
その笑顔に安心して、わたしも笑えば、彼は少し、複雑そうな顔をした。
「え、なんの顔それ」
「久しぶりに見たかも、お前が笑うとこ」
「えー、そんなことないよ」
「あるよ」
「仮にそうだとしても俺なら、って前提は聞かないよ」
「分かってるよ」
風呂入るわ、ってマホト は立ち上がるとわたしのクローゼットから自分の服を取り出して脱衣所に向かった。
いつのまにか増えていくマホトの私物は、もう自分でも気づかないほど当たり前になっているけど、ジンは気づいているのだろうか。
気付いたりしないんだろうな、とまた少し寂しくなって、遠くで聞こえるシャワーの音に目を閉じた。
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美月(プロフ) - 複雑な人間関係とかも丁寧に表していて、凄く楽しかったです。深く感じました。楽しかったです。ありがとうございました。 (2019年8月3日 2時) (レス) id: 44a792e69c (このIDを非表示/違反報告)
ちぇり(プロフ) - 思い出して読みたくなる素敵なお話ありがとうございます。また読みに来ます。 (2019年5月13日 23時) (レス) id: 3f39f65784 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 素敵な読み物ありがとうございました…! (2018年9月10日 21時) (レス) id: 9f5b6c1252 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うた | 作者ホームページ:http://commu.nosv.org/p/deepblue
作成日時:2018年4月26日 1時