なにこの地獄絵図 ページ20
ソファで横になって唸ってるサグワくんと、わたしにひっついたまま眠るマホト。
起きてるのはある程度酔ったわきをくんと酔いの冷めてきたわたし。
なにこの地獄絵図。
「オネーサンさあ、」
突然口を開いたわきをくんに身構える。
「名前なんていうの？」
出てきた言葉に拍子抜けする。そう言えば名乗ってなかったな。
「A」
「Aちゃん」
「です。」
「Aちゃんはさ、」
「はい」
「親方とジンくん、どっちのなの」
まあそもそもわたしは物ではないんだけど。
「どっちのでもないよ」
「楽しい？」
「え？」
「どっちつかずしてるのは楽しい？」
なにそれ、とは言わなかった。
そうみえるよね、普通。
「楽しくないよ」
「ならさ、やめなよ」
「わきをくんには関係ないよね」
「オネーサンおもしろいけど、こっちにもまだ居るとなると目障りなんだよね正直」
「うるせえなあわきを」
肩から聞こえた声に視線を向ければいつの間にか半分目を開いているマホト。
「お前には関係ない。Aもそう言ったろ」
「はーい」
降参です。とでも言うようにわきをくんは両手を軽く上げて缶に残ってるお酒を飲み干した。
マホトは立ち上がるとソファに近づいてサグワくんを叩く。驚いたように飛び起きたサグワくんは、自分の動きについていけなかったようで気持ち悪そうにしてる。
「酒なくなるからわきをと買ってこい」
亭主関白みたいだな。サグワくんも酔ったマホトはタチが悪いことをよく分かっているからだろうわきをくんを連れて部屋を出て行った。
それを見届けるとマホトは残っているお酒を流し込んで口に含んだ。何してるんだろうと思っていると両手で頬を抑えられる。少し開いた口の隙間から生ぬるいお酒が流れ込む。最後はうまく飲み込めなくて咳き込むと抱き締められた。
「なにがしたいの」
「お前はこのままでいい」
「いいよ無理しなくて」
「まあ変わるとしたら俺のもんになるくらいだろ」
「なにそれ」
笑ってみせるけど、顔を上げたマホトは真剣だ。ただし目は虚ろだから、酔ってることに代わりはないんだろうなあ。
こてん、とマホトの頭が膝に乗る。急に動いたからお酒が回ったんだろう。
帰ってきたわきをくんは昨日と同じようなその光景に怪訝そうな顔をしたけど、もう何も言っては来なかった。
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美月(プロフ) - 複雑な人間関係とかも丁寧に表していて、凄く楽しかったです。深く感じました。楽しかったです。ありがとうございました。 (2019年8月3日 2時) (
レス) id: 44a792e69c (このIDを非表示/違反報告)
ちぇり(プロフ) - 思い出して読みたくなる素敵なお話ありがとうございます。また読みに来ます。 (2019年5月13日 23時) (レス) id: 3f39f65784 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 素敵な読み物ありがとうございました…！ (2018年9月10日 21時) (レス) id: 9f5b6c1252 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うた | 作者ホームページ：http://commu.nosv.org/p/deepblue
作成日時：2018年4月26日 1時
