気のせい ページ15
部屋に入ってカバンを置いて、ベットに倒れ込む。ん、なんて腕を広げれば、大人しく収まった。
どうしたの、とは聞いてこない。それが心地よくて都合いい。
きっと批判にさらされて冷え切ってしまっているんだと思う。だから無性に空っぽになる。
目の前にいる女は本当に自分のことを見ているんだろうか、カワグチジンという作り上げられた人物像は本当に自分なのだろうか。
ふとそんなことを思う。
だからそうじゃない俺を知ってる人間に縋りたくなる。
Aはなにも聞かないし何も言わない。
なんとなく分かっているんだろう。
彼女の頭を抱えて、部屋を見渡す。
随分と見覚えがあってこの部屋には似合わないものが増えてるなと思う。
気付いていて、俺は何も言わない。
何かを言える立場でもないし、もやついた感情もきっと気のせいだ。
早く誰かと幸せになっちまえよ。
そうすれば俺がこの腕に戻ってくることはない。だけどそうなったら、俺はなにに縋っていくんだろうな。
ゆっくりと聞こえてきた寝息に彼女を抱き直して目を閉じた。
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美月(プロフ) - 複雑な人間関係とかも丁寧に表していて、凄く楽しかったです。深く感じました。楽しかったです。ありがとうございました。 (2019年8月3日 2時) (レス) id: 44a792e69c (このIDを非表示/違反報告)
ちぇり(プロフ) - 思い出して読みたくなる素敵なお話ありがとうございます。また読みに来ます。 (2019年5月13日 23時) (レス) id: 3f39f65784 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 素敵な読み物ありがとうございました…! (2018年9月10日 21時) (レス) id: 9f5b6c1252 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うた | 作者ホームページ:http://commu.nosv.org/p/deepblue
作成日時:2018年4月26日 1時