寂しい ページ1
きっと彼は寂しいのだ。
誰かにそばにいてほしくて、たまたまそこに居たのがわたしだっただけなのだ。
じわじわと強くなる力に応えるように彼を抱き締める。
苦しい、なんて二の次でここにいることを知って欲しかった。
ここにいるよ、ここにいるのはわたしなんだよ、わたしでありたいんだよ、ほかの子じゃなくてわたしであってほしいの。
心の中で駄々を捏ねて、全てを飲み込んで彼を包んで、包まれて、こんなにもわたしの中はあなたで溢れているよ、ねえあなたの中のわたしはどれくらいなのかな。
鼻を啜ったわたしに、彼は顔を上げる。
「なんでお前が泣いてるの」
彼の指が頬に触れる。
「ジンが寂しいのが感染ったのかも」
わたしの言葉に彼はなにそれって小さく笑ってわたしの髪を撫でる。
「どうせなら全部もらってよ」
唇に噛み付かれてわたしの返事は彼に飲み下された。
彼の寂しさがわたしの中に流れ込んできてもう死んでしまいそうだ。
そんな顔するならまだここにいたらいいのに。なんて、言えるはずもなくて寝たフリのまま。
ドアが閉まる音。さっきまで彼の腕に抱かれていたはずなのに今わたしを包んでいるのは虚無だけ。
心に穴が空いた、とはよく言ったもので、それでも彼がわたしに与えたものならいいかと寂しさでその穴を埋めた。
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美月(プロフ) - 複雑な人間関係とかも丁寧に表していて、凄く楽しかったです。深く感じました。楽しかったです。ありがとうございました。 (2019年8月3日 2時) (
レス) id: 44a792e69c (このIDを非表示/違反報告)
ちぇり(プロフ) - 思い出して読みたくなる素敵なお話ありがとうございます。また読みに来ます。 (2019年5月13日 23時) (レス) id: 3f39f65784 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 素敵な読み物ありがとうございました…！ (2018年9月10日 21時) (レス) id: 9f5b6c1252 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うた | 作者ホームページ：http://commu.nosv.org/p/deepblue
作成日時：2018年4月26日 1時
